「自称」猫に詳しい人ほど猫が嫌がる場所をモフってしまう
分析において特に注目されたのは、人間が猫のどこに手を触れるかでした。
上の図に示したように、一般に、猫には顎の下や耳の付け根など触れられると嬉しい「緑色」の部分と、猫によって喜んだり嫌がったり反応が異なる「黄色」の部分、多くの猫が触れられると嫌がるお腹などの「赤色」の部分があります。
研究者たちは「触れ合いタイム」中に被験者たちが猫のどこにどれだけ触ったかを測定し、被験者たちに答えてもらったアンケート内容と比較しました。
事前の予想では、猫に詳しいと答えた人は主に「緑色」部分に触れる機会が多く、詳しくない人はうっかり「赤色」部分に触れてしまう機会が多いと思われていました。
しかし研究者たちが分析を行ったところ、猫に対する知識や経験が高いと自己評価した人は、猫が喜ぶ「緑色」だけでなく猫が好まないと感じる「赤色」部分にも触れてしまう傾向があったのです。
一方で、猫に詳しくないと自己評価した人たちや仕事で動物にかかわる機会がある人たち(獣医などのプロ)は、猫が好む「緑色」の部分を中心に触れており、猫が嫌がる「赤色」部分に手を伸ばすケースは稀でした。
この結果は、知識や経験などの自己評価が、猫たちに思いもよらない負担をかける要因になっていることを示します。
そのため研究者たちは、知識や経験などの要因は、猫を飼うのに適しているかどうかを判断するのに必ずしも適した指標にはなりえない、と結論しました。
また被験者たちの性格特性と猫に触れた場所を比較すると、別の興味深い事実もみえてきました。
たとえば神経質な性格特性を持つ人々は、近づいてきた猫を抱いたり拘束しようとする傾向がみられました。(※高齢の被験者たちも猫を拘束する傾向がありました)
外交的な人は猫とのコミュニケーションにも積極的だった一方で、猫に好まれない部位を触る傾向も高くなりました。
一方で協調性が高い人は、猫の嫌がる部分に触れることが少ない傾向にありました。
今回の結果を参考にすることで研究者たちは「猫との触れ合いを楽しむための最適な方法を周知する教材が開発できる」と述べています。
また最後に「里親の条件として猫の飼育経験を付加すべきでない。なぜなら適切なサポートを受ければ、経験のない人も猫の素晴らしい保護者になれるから」と述べました。
知識と経験が遠慮や配慮を欠く要因になっているのだとしたら、今回の発見は、人類にとって手痛い教訓となるでしょう。