動物への「知識の深さ」は、動物を「幸福」にできるのか?
人間と動物の関わりにおいて、人間側の知識や経験、性格特性は動物の健康と幸せにとって重要な要素です。
動物園のパンダやコアラを飼育するには、動物に対する深い知識や経験を身に付ける必要があるだけでなく、性格的な部分も動物の世話に向いていなければなりません。
そのため、適切な知識・経験・性格特性は動物たちの「生存」に直結する問題と言えるでしょう。
では、こうした人間の知識・経験・性格特性は、動物たちの「幸福」とどのように関係しているのでしょうか?
動物に関する知識と経験があればあるほど、また性格特性が好ましいほど、動物たちの「生存」をより確かなものにできるのは間違いありません。
ですが、生存が保障されている状態において、人間側の知識・経験・性格特性が動物たちの「幸福」にどれだけ影響するかは、あまり検証されてきませんでした。
調査が進んでいなかった原因は、動物に関する知識や経験があればあるほど、性格特性が好ましいほど、動物たちが「幸福」になれると、多くの人々が信じていたからです。
そこでノッティンガム大学の研究者たちは2022年に、代表的なペットである「猫」を対象として、人間側の知識・経験・性格特性が猫の「幸福」と本当に連動しているかを調べることにしました。
調査にあたってはまず119人の被験者が募集され、猫を飼った経験や一緒に過ごした年月に加えて、自分がどれだけ猫の行動や仕草に詳しいかを自己評価してもらいました。
同時に被験者たちには心理テストを受けてもらい、協調性・誠実性・外向性・神経症・開放性に関する評価が行われました。
人間側の調査が終わると、いよいよ猫との「触れ合いタイム」が開始されます。
被験者たちは見知らぬ3匹の猫と引き合わされ、5分の間、近づいてきた猫を自由に触る権利が与えられました。(※自分から猫を追いかけることは禁止されていました)
被験者たちと猫の触れ合いはビデオに記録され、研究者たちの分析にまわされます。
すると意外な結果が明らかになったのです。