強みを諦めることが勝機につながる
今回の研究により、高い捕食者認識力とカモフラージュ能力など、どちらもあったほうがいいと思う能力が、実際には逆相関になりえることが示されました。
カメのような高い防御力、捕食者の口のサイズを遥かに超える巨体、人間並みの高い認知力、背景に溶け込む優れたカモフラージュ能力など、捕食者を回避する戦略が複数あるものの、その全てを兼ね備えた最強の弱者が存在しないのは、まだ発見されていない戦略間の隠れた逆相関が存在しているからかもしれません。
また今回の研究は、別の常識も揺るがしました。
これまで私たちは、カモフラージュ能力は捕食者に対抗するためにまず最初に選択される一次適応であると考えてきましたが、実際は、高い認知力を生かした捕食回避戦略が行き詰まった場合にとられる二次適応になる場合があることが示されました。
カエルたちはまず、脳の大型化や後肢の強化など純粋な強化を目指し、挫折した場合には脳を小さくして後肢も弱体化させてエネルギーを節約しつつ、カモフラージュでの生き残りに戦略を切り替えていたのです。
そこそこの脳や高いジャンプ能力などカエルにとってプライマルな能力を諦めることが生存につながったのは興味深いと言えるでしょう。
研究者たちは今後、一部のカエルの持つ毒などが他の戦略と関連していくかも調べていく、とのこと。
人類進化において脳の大きさを常に拡大していくことが生き残りのカギと思い込んでいましたが、脳を大きくする過程で失ってきたものもあるのかもしれませんね。