5万年前に人類のX染色体は塗り替えられてしまった
人類のX染色体とY染色体の間にも凄惨な殺し合いが起きていたのか?
謎を解明するため研究者たちは世界各地の男性から162種類のX染色体を採取し分析を行うことにしました。
もし人類のX染色体とY染色体も進化の過程で殺し合いをしてきたのならば、DNA配列になんらかの「戦いの痕跡」が残っている可能性があったからです。
結果、アフリカ人以外の人類のX染色体の19個所において、極めて共通性高い(配列パターンが似ている)領域があることが判明。
最も共通性が高い領域はアフリカ人以外の人類の91%に存在することが判明しました。
この結果は、現在に生きるアフリカ人以外の人類のX染色体は過去のある時点でほぼ「一色」に塗り替えられてしまっていたことを示します。
そこで研究者たちはDNAの配列パターンから、塗り替えイベントが起きた時期と発生地点を算出を試みました。
すると人類のX染色体の塗り替えイベントは、今からおよそ4万5000年~5万5000年の東アジアを震源地としていることが判明します。
これらの結果は、今から5万年ほど前に東アジアで出現した変異X染色体が、それまで存在した人類の多様なX染色体を駆逐して、アフリカ人以外の人類に急速に拡大したことを示します。
実際、塗り替えイベントの痕跡がある共通性の高い部分では、現在のアフリカ人以外の人類が持っているはずのネアンデルタール人の遺伝子がほとんど存在しませんでした。
人類は今から25万年ほど前にネアンデルタール人と混血し、X染色体にもネアンデルタール人の遺伝子が多くちりばめられています。
しかし5万年前に起きた変異X染色体の塗り替えイベントは、古代から継承されたネアンデルタール人由来の遺伝子のいくつかを上書きしてしまったのです。
しかしそうなると気になるのが、その方法です。