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戦争後に投棄された船と武器に生物が集まる / Credit:Canva
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世界大戦後に”投棄された武器や船”が海洋生物の住処となっていた

2025.09.26 11:30:48 Friday

第一次世界大戦や第二次世界大戦では、かつてない規模で大量の武器や船が製造されました。

しかし、戦争が終わると、それらの多くは持て余され、海や川へと投棄される運命をたどります。

そして、その遺物が長い年月を経て、思いもよらない形で海の生態系を変えていることが最新研究で示されました。

ドイツの海洋研究所「Senckenberg am Meer」とアメリカのデューク大学(Duke University)の研究チームは、投棄された爆弾と船が今では多様な生物の住処として機能していることを、それぞれ異なる手法で明らかにしました。

前者のバルト海の研究は2025年9月25日に『Communications Earth & Environment』に掲載され、後者のマローズ湾の研究は同じく2025年9月25日に『Scientific Data』に掲載されました。

Dumped World War munitions and sunken ships serve a wild new purpose https://newatlas.com/environment/dumped-world-war-munitions-ships/ Discarded world war weapons and ships are now home to thriving marine life https://www.scimex.org/newsfeed/discarded-world-war-weapons-and-ships-are-now-home-to-thriving-marine-life
Sea-dumped munitions in the Baltic Sea support high epifauna abundance and diversity https://doi.org/10.1038/s43247-025-02593-7 Mapping the “Ghost Fleet of Mallows Bay”, Maryland with drone-based remote sensing https://doi.org/10.1038/s41597-025-05635-z

世界大戦後に海や川に投棄された武器や船

かつて、戦後処理の費用や安全確保の難しさから、余剰となった兵器やが“海中投棄”という手段で片づけられたことがりました。

例えばドイツの沿岸域では、第二次大戦後に約160万トンもの弾薬がバルト海へ投棄されたと見積もられています。

また、米国メリーランド州のマローズ湾には、第一次世界大戦中に建造された木造船が意図的に沈められ、現在も147隻の「幽霊船」が浅瀬に残されています。

こうした人工物が海洋生態系に及ぼす影響は長らく議論されてきましたが、実際の影響は十分に記録されていませんでした。

そこで2つの研究チームが調査を行いました。

1つ目の研究では、ドイツの研究チームがバルト海リューベック湾で第二次世界大戦後に投棄された巡航ミサイル・V1飛行爆弾の弾頭を対象に、遠隔操作の小型潜水ロボットで観察とサンプリングを行いました。

金属の外殻、腐食で露出した爆薬、その周囲の泥底という環境を並行して記録し、付着生物の種類と個体数を面積あたりで数えました。

同時に海水中の爆薬由来化学物質の濃度を測定しています。

2つ目の研究では、アメリカの研究チームがメリーランド州ポトマック川のマローズ湾に残る「幽霊船」を最新のドローンで高解像度に可視化しました。

また、写真測量やデジタル地表モデルなどを作成し、全147隻の位置と形状を地図化しています。

では、戦後に廃棄された武器や船は現在どんな影響を及ぼしていたのでしょうか。

次ページ戦争の「負の遺産」が、生物が集まる「命の拠点」に変化していた

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