世界大戦後に海や川に投棄された武器や船
かつて、戦後処理の費用や安全確保の難しさから、余剰となった兵器や船が“海中投棄”という手段で片づけられたことがりました。
例えばドイツの沿岸域では、第二次大戦後に約160万トンもの弾薬がバルト海へ投棄されたと見積もられています。
また、米国メリーランド州のマローズ湾には、第一次世界大戦中に建造された木造船が意図的に沈められ、現在も147隻の「幽霊船」が浅瀬に残されています。
こうした人工物が海洋生態系に及ぼす影響は長らく議論されてきましたが、実際の影響は十分に記録されていませんでした。
そこで2つの研究チームが調査を行いました。
1つ目の研究では、ドイツの研究チームがバルト海リューベック湾で第二次世界大戦後に投棄された巡航ミサイル・V1飛行爆弾の弾頭を対象に、遠隔操作の小型潜水ロボットで観察とサンプリングを行いました。
金属の外殻、腐食で露出した爆薬、その周囲の泥底という環境を並行して記録し、付着生物の種類と個体数を面積あたりで数えました。
同時に海水中の爆薬由来化学物質の濃度を測定しています。
2つ目の研究では、アメリカの研究チームがメリーランド州ポトマック川のマローズ湾に残る「幽霊船」を最新のドローンで高解像度に可視化しました。
また、写真測量やデジタル地表モデルなどを作成し、全147隻の位置と形状を地図化しています。
では、戦後に廃棄された武器や船は現在どんな影響を及ぼしていたのでしょうか。