障害物を歩きたい欲求は年齢に関係ない!
本研究では、公道を歩く人々が従来のコースよりも障害物のあるコースを選ぶ可能性がどの程度あるのかに焦点を当てました。
そこで研究チームは、イギリス在住の約600人を参加者として募り、一般的な歩道と障害物(バランス台・飛び石・段差・スロープなど)を取り入れた歩道の画像を提示。
参加者に、どちらのコースを歩きたいかを選んでもらいました。
それと同時に、障害物の難易度がコース選択にどれほど影響するかを調べるため、障害物に手すりを付けたり、全体の距離を短くして難易度を調節。
さらに、彫刻や花壇の設置、周囲の人の有無など、心理的な要素も加えて、さまざまなシナリオを提示します。
参加者には、それらのコースへの挑戦がどの程度難しいと思うかを、1(一般的な歩道を歩くのと同じくらい簡単)〜7(とても挑戦しようとは思わない)までの7段階で評価してもらいました。
その結果、参加者の78%は、低〜中程度の適度な難易度であれば、平坦な道よりも障害物コースを選択することが分かりました。
難易度7と評価されたコースを選ぶ参加者は非常に少なかったものの、たとえば、全体の距離を短くすると選ばれる確率が10%上昇、手すりを付けた場合は12%上昇しています。
最も難易度が低く怖さも感じないと評価されたコースは、全体の距離が短く、段差の低い飛び石と手すり付きの幅広で安定したバランス台を取り入れたコースでした。
それから心理的な要素も障害物コースの選びやすさに関係していたようです。
研究主任のポール・ハネル(Paul Hanel)氏は「恥ずかしさや不安、警戒心などで敬遠する大人がいる一方で、デザインや安全性、難易度、場所に細心の注意を払えば、大多数の人が障害物コースを選択するようになりました」と話します。
確かに、人目の多い場所ではあまり気が進みませんが、静かな散歩道であれば、大人でも障害物コースに挑戦しやすくなりますね。
こんなふざけた条件の検証もされていますが、心理面では影響が大きいようです。
また重要な点として、障害物コースを選ぶ傾向には年齢や性別が関係しないことが示されています。
調査では、参加者の年齢、性別、生活習慣、職業、性格特性、活動レベルを考慮しても、全体的なコース選択の傾向は変わりませんでした。
ただし難易度が高いコースでは、当然というべきか、日頃から運動をしている人々で選択する可能性が高く、高齢の参加者では低くなっています。
とはいえ、すべての年齢層で「どんなシナリオでも障害物コースを完全に避ける」と答えた参加者はごく少数に留まっていました。
チームは以上の結果を踏まえ、健康を少しでも改善できる手段として、都市部に障害物コースを設置すべきであると提案します。
同チームのアンナ・ボルディーナ(Anna Boldina)氏は、次のように述べています。
「今回の発見は、都市景観のわずかな変化で、歩行者をより幅広い身体活動に誘導できることを示すものです。
これらの結果は、都市部の政策立案者やデザイナーが人々のウェルビーイング(心身の健康・幸福)を向上させるような公共設備の計画や導入に役立つと考えられます」
チームは今後、実際のコースを用いた実地テストを行うことで、本当に人々が障害物コースを選択するのか、また、健康レベルにどれほどの効果があるのかを調べる予定です。