粘膜を強化して精子を通過させない「避妊ジェル」を開発
新しい避妊薬の主成分はロブスターやエビ、カニの外骨格に含まれる「キトサン」です。
キトサンは動物性の不溶性食物繊維の1つであり、ダイエットサプリや特定保健用食品(トクホ)、医療分野における縫合糸などに使用されてきた安全な天然成分です。
研究チームは、このキトサンと粘液に潤滑特性を与えるタンパク質「ムチン」の分子を組み合わせることで、精子をブロックする「避妊ジェル」を開発しました。
この避妊ジェルを塗布すると、子宮頚管(子宮から膣につながる筒状の部分)の粘膜バリアが一時的に強化され、精子が通過するのを阻止してくれるというのです。
しかもホルモンに影響を与えないので、女性が副作用を被ることもありません。
そして8頭のヒツジを用いた人工授精テストの結果、研究チームは「新しい避妊ジェルが子宮に到達する精子の数を平均98%減少させた」と報告しています。
ただし、この数字は「精子の数を減らす割合」であり、既存の避妊薬が示す「避妊できる割合」とは異なる点に注意しなければいけません。
さらに人間の子宮頚管粘液と精子を使用した研究室での実験でも、同様の効果を確認できました。
しかも避妊ジェルを塗布すると即座に粘液が強化されはじめ、1分後には精子が通過する数を減らし、5分後には完全な遮断が可能になりました。
研究チームは、効果時間について次のように述べています。
「新しい避妊薬は、性交の数秒前から数時間前の間で使用できるはずです。
効果は何時間も続く可能性がありますが、粘液が入れ替わるにつれて効果も減少していくでしょう」
精子のほとんどを遮断できるため、コンドームとの併用でほぼ確実な避妊が可能になるかもしれません。
天然由来でホルモンにも影響を与えない避妊薬なため、製品化が待ち遠しい人も多いでしょう。
現在クルージャー氏は新たな会社「Cirqle Biomedical」を設立し、避妊ジェルの臨床試験を目指して研究を続けています。