水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」
水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」 / Credit:Xuchen Liu(Tongji University)et al., arXiv(2023)
technology

プロペラをスクリューに変形!「飛行と潜水」を可能とするドローン!

2023.02.25 Saturday

アニメなどに登場する変形してさまざまな環境を移動できる乗り物はロマンがありますが、それはもう創作の世界だけではないようです。

中国・同済大学(Tongji University)知的自律システム上海研究所(Shanghai Research Institute for Intelligent Autonomous Systems)に所属するシュチェン・リュウ氏ら研究チームが開発中の水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は変形機構を上手く取り込み、空と水中の移動を可能にしています。

この新型ドローンは一見通常の飛行ドローンですが、推進ユニットの角度を変えることで、プロペラをスクリューに変えて環境にあった推進力を生み出すことができます。

研究の詳細は、プレプリントサーバ「arXiv」に2023年2月7日付で発表されました。

TJ-FlyingFish drone flies through the air and “swims” underwater https://newatlas.com/drones/tj-flyingfish-aerial-underwater-drone/
TJ-FlyingFish: Design and Implementation of an Aerial-Aquatic Quadrotor with Tiltable Propulsion Units https://arxiv.org/abs/2301.12344

ギアチェンジと角度変更で2つの環境に対応する水空両用ドローン

ドローンは災害の調査や自然環境の観測に役立ちます。

しかし空と海では別々の機能が求められるため、広範な調査には飛行ドローンと潜水ドローンの両方が必要になります。

また潜水ドローンは活動範囲や移動速度に限界があるので、目的地周辺まで他の移動手段を用いて潜水ドローンを運ばなければいけません。

従来のドローンは海と空の境界を越えられない
従来のドローンは海と空の境界を越えられない / Credit:Canva

こうした手間を省いてくれるのが「水陸両用ドローン」です。

水陸両用ドローンを用いるなら、空(地上)・水中の調査をすぐに切り替えられます。

また離れた場所の水中調査を行う場合でも、自身で飛行して素早く現地に赴き、そのまま水中に潜って仕事を果たせます。

既にいくつかの研究機関や企業が水陸両用ドローンの開発に取り組んでおり、リュウ氏ら研究チームもその1つです。

水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は推進ユニットのギアと角度を変更できる
水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は推進ユニットのギアと角度を変更できる / Credit:Xuchen Liu(Tongji University)et al., arXiv(2023)

彼らが現在開発中の水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は、推進ユニットのギアや方向を使い分けることで、空と海の両方の環境に対応できます。

空中では、すべての推進ユニットが上を向き、2速ギアの「高速ギア」で稼働します。

これにより、従来のクワッドコプターと同様の飛行が可能になります。

そして潜水するときには、まず空から水面に向かって下降し、着水。

推進ユニット(プロペラ)の角度を自由自在に動かし、深く潜ったり前進したりできる。方向転換も容易。
推進ユニット(プロペラ)の角度を自由自在に動かし、深く潜ったり前進したりできる。方向転換も容易。 / Credit:Xuchen Liu(Tongji University)et al., arXiv(2023)

その後、推進ユニットが回転して下を向き、「低速ギア」へと変更されます。

これによりプロペラが力強く回転し、ドローン本体を水面下へと引き込むのです。

さらに水中では、各推進ユニットの角度や推力が調整され、ドローンは垂直方向と水平方向を自由に移動できます。

水中での作業を終えると再び水面まで上昇し、飛行用の設定で飛び立ちます。

「TJ-FlyingFish」が水面から空に飛び立つ様子
「TJ-FlyingFish」が水面から空に飛び立つ様子 / Credit:New Atlas(YouTube)_TJ-FlyingFish flying/aquatic drone(2023)

また研究チームによると、「空と水中のどちらの環境でも自律的に移動でき、人間の介入を必要としない」ようです。

ちなみに現在の「TJ-FlyingFish」はプロトタイプであり、概念実証の段階に過ぎません。

重量1.63kgであり、1回の充電で「6分間の飛行(ホバリング)」または「40分間の水中移動」が可能

水中の最大深度は3m、最大水中速度は2m/sです。

水中を自由自在に動く「TJ-FlyingFish」
水中を自由自在に動く「TJ-FlyingFish」 / Credit:New Atlas(YouTube)_TJ-FlyingFish flying/aquatic drone(2023)

ドローン共通の課題である「稼働時間の短さ」がやはりネックになっています。

飛行時間が極端に短いため、このままでは水空両用のメリットを十分に生かせないでしょう。

研究チームは今後も開発を続ける予定であり、これからの進展と拡大に期待したいところです。

2023年5月には、ロンドン開催の国際会議「2023 IEEE International Conference on Robotics and Automation」で論文が発表される予定です。

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