経済格差が大きい国ほど、洪水時の死亡率が高い
研究チームは今回、世界の中・高所得の67カ国を対象に、1990年から2018年の間に発生した573件の大規模な洪水災害について分析を行いました。
目的は、一人当たりのGDP(国内総生産)や被災地の人口規模などの要因をコントロールした上で、「経済格差」と「死亡率」の関連性を明らかにすることです。
その結果、経済格差が大きな国ほど、洪水時の死亡率が高くなっていることが分かりました。
国民の所得が不均等に分布している国では、所得がより均等に分布している国に比べて、死亡率の中央値が26倍も高くなっていたのです。
特にアメリカ大陸やアジア、アフリカの国々で洪水災害の死亡率が最も高く、ヨーロッパやオーストラリアでは死者数が少なくなっていました。
下の図を見れば分かるように、この結果は経済格差の程度と見事に一致しています。
カナダを除くアメリカ大陸や中国を中心とするアジア、アフリカの一部地域では国内の経済格差が大きく、ヨーロッパや北欧、オーストラリアは経済格差が比較的小さいです。
チームの統計分析によると、所得格差が3%ポイント上昇すると、洪水の死亡率が平均16%上昇していました。
研究主任のサラ・リンダーソン(Sara Lindersson)氏は「今回のデータは経済格差と死亡率の因果関係を直接立証するものではありませんが、洪水時の死亡率を説明するのに、経済的不平等が重大な要素となっていることを強く示唆している」と述べています。
では、なぜ経済格差が広がると洪水災害での死亡率が上がるのでしょうか?