ディスクに映る「影」から傾きを発見!
うみへび座TW星は太陽と比べると、直径1.08倍、質量0.7倍、明るさは5分の1程度の星です。
周囲を取り巻くディスクの間には2つの暗い隙間が見つかっており、それによって3つのディスクに分かれています。
このディスクの中で新たな惑星が形成されている最中であり、太陽系が誕生して間もない頃の姿に近い天体として注目されてきました。
さらに2016年の研究で、ディスクの一部に「影」が出来ていることが確認されていました。
調査の結果、それより内側のディスクが少し傾いていることで中心星の光が遮られ、影が出来ていることが分かったのです。
これは未知の惑星の引力によってディスクが傾いたことを示唆する重要な知見でした。
そして研究チームは今回の新たな調査で、ディスクの中に「第2の影」を発見したのです。
これはNASAのハッブル宇宙望遠鏡が2021年6月6日に撮影した観測データの中から発見されました。
研究主任のジョン・デベス(John Debes)氏は「数年前に見つかっていた影とは違う場所にあり、最初は私たちも何を見ているのか見当がつきませんでした」と話します。
しかし分析を進める中で、中心星に最も近いディスクも傾いていることで、その外側のディスクに影が出来ていることを突き止めました。
つまり、中心星に近い内側のディスクが2つとも異なる角度で傾いていたのです。
デベス氏は「以前の観測では、2つのディスクが非常に接近していたせいで影を見逃していましたが、時間が経つにつれてディスクの距離が離れ、もう一つの影の存在があらわになりました」と説明します。
こちらがそのイメージ図です。
データを分析したところ、中心星に対する2つのディスクの軌道面は一方が約5.5°、もう一方が約7°傾いていました。
この5〜7°という傾斜角の幅は、いくつかの太陽系惑星に見られる傾斜角と近似しており、「うみへび座TW星は太陽系と同じスタイルで成長していることを示唆している」とデベス氏は述べています。
また新たな「影」の発見は、2016年に見つかったのとは別の惑星が形成されつつあり、その引力によってディスクに傾きが生じたことを示すものです。
ただし、1つの惑星が片方のディスクの傾きと、もう1つの惑星がもう片方のディスクの傾きと別個に関係しているのは非常に珍しいといいます。
デベス氏は「原始惑星系円盤でこのような現象が見られるのは初めてで、これは星系の発達プロセスが当初考えられていたよりも遥かに複雑であることを示唆している」と話しました。
さらにチームは、最も外側を回っている巨大なディスクの中にも謎めいた暗いスポットがあり、第3の惑星が誕生しつつある痕跡を見つけています。
しかし、これらディスクの中でどんな規模の惑星が形成されているのかはまだ解明されていません。
デベス氏らは、太陽系も「うみへび座TW星」と同じように始まった可能性があり、研究対象として非常に魅力的であると話します。
今後の調査次第では、私たちの暮らす地球が誕生した詳しいプロセスも、この天体の観測から明らかになるかもしれません。