コロナに強い遺伝子は無症状の確率を「最大で8倍」にする
今回の研究では、コロナ禍を巻き起こした新型コロナウイルスに対して、特に強い免疫遺伝子「HLA遺伝子」のタイプが存在するのか、存在するとしたら無症状だったケースとどう関連するかが主な調査対象となりました。
調査にあたっては、まず骨髄バンクに登録された3万人の人々に参加が呼びかけられました。
骨髄バンクに登録している人々は既にHLA遺伝子のタイプが検査によって判明しています。
また参加者となった人々は、調査期間中に最低でも3日続く風邪症状があったかどうかが記録されました。
次に研究者たちは参加者たちの中から、ワクチンが開発される前の段階で、新型コロナウイルスの陽性反応が出た人々1400人を選別しました。
すると1400人のうち、136人は感染したのにもかかわらず無症状だったと判明。
さらに無症状だった人々のHLA遺伝子を調べたところ、無症状の人々の20%はHLA遺伝子のタイプが「HLA-B15:01」と呼ばれる特定の変異バージョンであることが判明しました。
この結果は「HLA-B15:01」を持つことが無症状と大きく関連していることを示します。
そこで研究者たちは「HLA-B15:01」の細胞内の数を調べてみました。
私たち人間は母親から受け継いだ染色体セットと父親から受け継いだ染色体セットからなる、2セットの染色体を持っています。
HLA遺伝子も母親由来のものと父親由来のものの2種類が存在します。
そのため「HLA-B15:01」のバリエーションを全くもたない人、1つだけ持つ人、そして2つ持つ人が存在します。
研究者たちが調べたところ「HLA-B15:01」を1つ持つ人は無症状になる確率が2倍高く、2つ持っている人は無症状になる確率が8倍も高くなっていました。
次に研究者たちは新型コロナウイルスが出現する前に採決された血を調達し、新型コロナウイルスの断片に対する反応を調べてみました。
すると「HLA-B15:01」を持つ人々のT細胞は、新型コロナウイルスが出現する前だったにもかかわらず、新型コロナウイルスの断片に対して強い免疫反応を示しました。
そのため研究者たちは「HLA-B15:01」が新型コロナウイルスに対して強い反応を示せたのは、昔から存在する普通のコロナウイルスに感染したときの記憶を利用していたからだと結論しました。
私たちの免疫システムは一度感染した病原体の情報を記憶し、次に同じ病原体に感染しても素早く倒すことが可能になっています。
「HLA-B15:01」を持つ人々は、普通のコロナウイルスに感染した時の記憶を使って、新型コロナウイルスを素早く殲滅することができたのです。
研究者たち「つまり、たとえ悪者が服を変えて現れたとしても、「HLA-B15:01」の免疫システムは腕や入れ墨など別の要素で悪者を見破れるのでしょう」と述べています。
これまでの研究で「HLA-B15:01」はヨーロッパ系の白人の10%が持つことが知られています。
研究者たちは「HLA-B15:01」が無症状にする仕組みを薬で代替することができれば、多くの人々を感染しても無症状で済ませられるようになると述べています。