「1秒」でゲル化する止血スプレーを開発
戦場や大規模災害の現場では、「止血が難しいタイプの傷」が多く発生します。
爆発や銃撃による傷は、浅くまっすぐ切れた傷ではなく、えぐれたような深い傷や、内臓や太い血管を巻き込んだ複雑な損傷になることが少なくありません。
こうした場合、ただガーゼを押し当てれば済む、というわけにはいきません。
これまで医療現場で広く使われてきたのは、シート状の「パッチ型止血材」です。
しかしパッチ型にはいくつかの限界があります。
平らな形なので、深い傷の奥や、でこぼこの多い傷にぴったり沿わせることが難しく、血液で滑ってしまうこともあります。
また、温度や湿度に敏感で、長期保存や現場での取り扱いに制約があると指摘されてきました。
戦場のように冷蔵設備がなく、環境も安定しない場所では、常にベストな状態で使えるとは限りません。
そこで研究チームが着目したのが、「貼る」のではなく「粉を吹きかける」止血剤という発想です。
粉末であれば、スプレーのように傷の上から広く散布でき、深いところや入り組んだ隙間にも自然に入り込みます。
これなら、医療の専門訓練を受けていない兵士でも、比較的簡単に使うことが期待できます。
ところが、従来の粉末止血剤にも弱点がありました。
多くの粉末は「血を吸ってふくらみ、物理的に塞ぐ」という仕組みで働きます。
大量出血で血の勢いが強いと粉が流されてしまったり、血圧が高い状況では十分な壁を作れなかったりして、血圧が高い状態で起きる激しい出血には限界があったのです。
KAISTの研究チームが開発したAGCL粉末止血剤は、この問題を根本から解決しようとしたものです。
AGCLは血液を単に吸うだけでなく、血液中の成分と反応して自らゲル状の「壁」に変化するように設計されています。
血に触れると約1秒でハイドロゲルに変わり、傷口の形に沿ったバリアをつくります。
またこのゲルは、自分の重さの7倍以上の血液を抱え込み、高い接着力で傷口に密着します。
では、このAGCLはどうしてすぐに止血できるのでしょうか。詳しい仕組みを次項で確認しましょう。

























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