史上初の量子エンジンを設計&試運転することに成功!
史上初の量子エンジンを設計&試運転することに成功! / Credit:沖縄科学技術大学院大学 . 量子革命の原動力、「量子エンジン」が実現する日も近い?
quantum

燃料がいらない!?日本を含む研究チームが史上初の「量子エンジン」試運転に成功!

2023.10.14 Saturday

EMドライブと違って、こっちは本物です。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)などで行われた研究により、量子状態の変化によって仕事量をうみだす量子エンジンの史上初の実証が行われました。

量子エンジンは通常のエンジンとは異なり、燃料や酸素といった外部の供給を必要とせず、密閉されたピストン内部の量子状態の変化だけで仕事量を持続的に出力することが可能です。

通常のエンジンがガソリンの爆発という古典的な物理現象に依存するならば、量子エンジンは量子状態の変化という量子力学的な物理現象からエネルギーを抽出していると言えるでしょう。

量子コンピューターは演算能力において魔法のような能力を発揮しましたが、量子エンジンではいったいどんな仕組みでエネルギーを出力しているのでしょうか?

研究内容の詳細は2023年9月27日に『Nature』にて「BEC-BCSクロスオーバーによる量子エンジン(A quantum engine in the BEC–BCS crossover)」のタイトルで掲載されました。

量子革命の原動力、「量子エンジン」が実現する日も近い? https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2023/9/28/powering-quantum-revolution-quantum-engines-horizon
A quantum engine in the BEC–BCS crossover https://www.nature.com/articles/s41586-023-06469-8

量子エンジンは燃料を必要としない

量子エンジンは燃料を必要としない
量子エンジンは燃料を必要としない / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

自動車やバイクなどに使われる普通のエンジンでは、燃料を酸素と混ぜて点火し、爆発によって生じた高圧によってピストンを押し上げます。

爆発が終わればピストン内部の圧力は元の低圧状態に戻りますが、直ぐに再び燃料と酸素が注入され、爆発が繰り返されます。

現在、世界には多種多様な内燃機関が存在しますが、その全ては圧力の差を使って動力が供給されています。

逆を言えば「低圧と高圧のサイクルを繰り返す仕組み」さえあれば、どんなものもエンジンになれる可能性があります。

そこで今回、沖縄科学技術大学院大学の研究者たちは、量子エンジンと呼ばれる全く新しいタイプの仕組みを開発し、試運転を試みることにしました。

新たな量子エンジンも一般のエンジンと同じく「低圧と高圧のサイクルを繰り返す仕組み」を備えています。

しかし、圧力の生成には燃料も酸素も必要とせず、代わりにピストン内部の「量子の状態」を変化させることで、低圧と高圧のサイクルを実現しています。

「量子の状態」というと難解なイメージを持つかもしれませんが、この記事ではわかりやすく解説します。

次ページ量子の状態が違うとピストン内部の圧力も変わる

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

量子論のニュースquantum news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!