ロボットと共同作業をする人間は無意識に手を抜いてしまう
実験には42人が参加しました。
彼らは与えられた回路基板の画像(計320枚)に欠陥が無いかをチェックし、マークを付けるという検査タスクを行いました。
参加者の半数は単独でこのタスクに取り組み、もう半数は「ロボットによって検査済みの回路基板」をチェックするよう伝えられました。
前者はすべて自分でマークを付けますが、後者は、ロボットによって既にいくつかの欠陥にマークが付けられており、その上でマークを追加していきます。
そして複数のセクションからなる検査タスク(合計90分)を終えた後、参加者たちは「タスクに対してどの程度責任を感じているか」「どれほど努力したか」「どのように実行したか」を自己評価しました。
実験の結果、一見すると、ロボットの存在は大きな違いを生まないように思えました。
「回路基板の検査に費やした時間」「検査された領域」にグループ間で有意な差は見られなかったのです。
同様に、「タスクに対する責任感」や「主観的なパフォーマンス」など、自己評価にも違いはありませんでした。
ところが回路基板の欠陥の発見率は、タスクの後半で異なっていることが分かりました。
ロボットと一緒に働く参加者は、タスクが進むにつれて欠陥を見つける精度が低くなっていたのです。
実際、最後のセクションでは、単独グループの参加者は5つの欠陥のうち平均4.2個発見しましたが、共同作業グループの参加者は平均3.3個しか発見できませんでした。
このことは、ロボットと作業する参加者が、ロボットのマーク付けが正確であることを認識するにつれてロボットの働きに依存し、無意識に手を抜いてしまうことを意味します。
彼らは「単独グループと同じく手を抜いていない」と主張しましたが、実際には、無意識のうちに「ロボットは優秀なので、きっと回路基板の欠陥を見逃していないだろう」と思い込んでいたのです。
つまり精度の高い仕事をこなすロボットとの共同作業は、人間の「手抜き」を引き起こしてしまうのです。
研究チームは、「この社会的手抜きが、製造業全般で、特に二重チェックが一般的な安全に関する分野に悪影響を及ぼす」と考えています。
今回の実験は90分だけでしたが、もっと長く続く作業ではなおさらでしょう。
もちろんロボットの導入自体には多くのメリットがあります。
そのため今後は、新しい形の「社会的手抜き」にどのように対処していくべきか、またその影響はどのように現れるか、現場での検証を含め、考慮していく必要があるでしょう。