ロボットと作業する人間は「手抜き」する
ロボットと作業する人間は「手抜き」する / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
psychology

ロボットと作業すると人間は「無意識に手抜きしてしまう」ことを発見

2023.10.25 07:00:52 Wednesday

大きなチームの中で働くと、自覚があるか無いかにかかわらず、「誰かがやってくれるだろう」と手を抜いてしまうことがあります。

こうした傾向は、実はロボットがパートナーであっても同様だと判明しました。

最近、ドイツのベルリン工科大学(Technical University of Berlin Berlin)に所属するディートリンド・ヘレン・シメク氏ら研究チームは、品質チェックの実験において、ロボットと作業チームを組んだ人は欠陥を発見することが少なくなると報告しました。

参加者たちは、自分では「いつも通り注意を払っている」と思っていましたが、無意識のうちにロボットに依存し、手を抜いていたのです。

研究の詳細は、2023年10月18日付の科学誌『Frontiers in Robotics and AI』に掲載されました。

Do humans get lazier when robots help with tasks? https://blog.frontiersin.org/2023/10/18/do-humans-get-lazier-when-robots-help-with-tasks/ Humans engage in social loafing when they have robot team members https://www.earth.com/news/humans-engage-in-social-loafing-when-they-have-robot-team-members/
Lean back or lean in? exploring social loafing in human–robot teams https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frobt.2023.1249252/full

共同作業でついつい手を緩めてしまう「社会的手抜き」

チームで作業すると一人一人の生産性が落ちる「社会的手抜き」
チームで作業すると一人一人の生産性が落ちる「社会的手抜き」 / Credit:Canva

集団で共同作業を行う時に、1人当たりの生産性が人数の増加に伴って低下する現象を「社会的手抜き」と言います。

特に個人の努力が評価や報酬の向上に繋がりにくい環境で生じやすいようです。

また優秀なチーム・パートナーと一緒に働くと、「自分以外が完璧に作業をこなしてくれるだろう」と考えてしまい、手抜きに繋がるかもしれません。

これら人間同士の「社会的手抜き」は以前から知られていた現象であり、その原因や予防策はよく研究されてきました。

ロボットと人間の共同作業がもたらす影響は?
ロボットと人間の共同作業がもたらす影響は? / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

しかし近年の労働環境を考えると、人間だけのチームではなく、ロボットと人間のチームにおける生産性についても研究していく必要があります。

工場などでは既に多種多様なロボットが導入されており、今後は高度なAIを装備した優秀なロボットを利用することも増えていくでしょう。

では人間とロボットが共同作業する場合、人間の生産性にはどのような影響があるのでしょうか。

シメク氏ら研究チームは、その点を明らかにするために品質管理の実験を行うことにしました。

ロボットと共同作業をする人間は無意識に手を抜いてしまう

実験には42人が参加しました。

彼らは与えられた回路基板の画像(計320枚)に欠陥が無いかをチェックし、マークを付けるという検査タスクを行いました。

欠陥の例。(左上)欠陥なし、(右上)コンデンサーの欠陥、(左下)傷、(右下)はんだ付けミス
欠陥の例。(左上)欠陥なし、(右上)コンデンサーの欠陥、(左下)傷、(右下)はんだ付けミス / Credit:Dietlind Helene Cymek(Technical University of Berlin Berlin)et al., Frontiers in Robotics and AI(2023)

参加者の半数は単独でこのタスクに取り組み、もう半数は「ロボットによって検査済みの回路基板」をチェックするよう伝えられました。

前者はすべて自分でマークを付けますが、後者は、ロボットによって既にいくつかの欠陥にマークが付けられており、その上でマークを追加していきます。

そして複数のセクションからなる検査タスク(合計90分)を終えた後、参加者たちは「タスクに対してどの程度責任を感じているか」「どれほど努力したか」「どのように実行したか」を自己評価しました。

実験の結果、一見すると、ロボットの存在は大きな違いを生まないように思えました。

「回路基板の検査に費やした時間」「検査された領域」にグループ間で有意な差は見られなかったのです。

同様に、「タスクに対する責任感」や「主観的なパフォーマンス」など、自己評価にも違いはありませんでした。

ところが回路基板の欠陥の発見率は、タスクの後半で異なっていることが分かりました。

ロボットと一緒に働く参加者は、タスクが進むにつれて欠陥を見つける精度が低くなっていたのです。

ロボットと共に働く人間は、単独で働く人間よりも、検査タスクで見逃しが多い
ロボットと共に働く人間は、単独で働く人間よりも、検査タスクで見逃しが多い / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

実際、最後のセクションでは、単独グループの参加者は5つの欠陥のうち平均4.2個発見しましたが、共同作業グループの参加者は平均3.3個しか発見できませんでした。

このことは、ロボットと作業する参加者が、ロボットのマーク付けが正確であることを認識するにつれてロボットの働きに依存し、無意識に手を抜いてしまうことを意味します。

彼らは「単独グループと同じく手を抜いていない」と主張しましたが、実際には、無意識のうちに「ロボットは優秀なので、きっと回路基板の欠陥を見逃していないだろう」と思い込んでいたのです。

つまり精度の高い仕事をこなすロボットとの共同作業は、人間の「手抜き」を引き起こしてしまうのです。

研究チームは、「この社会的手抜きが、製造業全般で、特に二重チェックが一般的な安全に関する分野に悪影響を及ぼす」と考えています。

今回の実験は90分だけでしたが、もっと長く続く作業ではなおさらでしょう。

もちろんロボットの導入自体には多くのメリットがあります。

そのため今後は、新しい形の「社会的手抜き」にどのように対処していくべきか、またその影響はどのように現れるか、現場での検証を含め、考慮していく必要があるでしょう。

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