52個のインプラントによりギネス世界記録を持つ女性
生体(自分の身体)を改造して、生活の効率化や生産性の向上を図ろうとすることを「バイオハック」と表現することがあります。
そしてそれらを実践する人々は「バイオハッカー」と呼ばれます。
例えばそのような人たちは、ICチップなどを身体に埋め込んで、電子デバイスを持たずに承認ポイントを通過できるようにしたりするのです。
アナスタシア・シン氏は、そんな「バイオハッカー」のひとりです。
彼女の身体には、合計52個ものインプラントが埋め込まれており、その圧倒的な数は、ギネス世界記録として公式に認められています。
Weeeee! I can officially announce that I’m the world’s most technologically implanted human! Since it’s a first, they had to create a new record category. 🤖✌️🫶 pic.twitter.com/1TC3bjmJ2N
— Anastasia Synn (@SiaSynn) April 9, 2023
例えば、彼女の両腕には幅6cm、厚さ1.3cmほどの磁石が埋め込まれており、手や指でつかむことなく、釘や包丁など様々な金属を持ち上げることができます。
そして耳珠(じじゅ:耳の穴の前の突起。音を集めるのに役立つ部位)にも、音を伝えるための小さな磁石が埋め込まれています。
Bluetooth 受信機や銅線も埋め込まれており、まるでイヤホンをしているかのように音を受け取って聞くことができるのです。
さらに彼女は、埋め込んだ他のデバイスによって、手ぶらで玄関の鍵を開けたり、コンピュータの電源を入れたりできます。
埋め込まれたインプラント約半分は、体内のデバイスを動かすためのマイクロチップだと言われています。
まるでサイボーグのようですが、彼女はその改造された身体を使って、特殊な手品やパフォーマンスを行っています。
例えばシン氏は、「左手に第六感があり、壁に埋め込まれた電線の存在を感じたり、変圧器や電源ボックスに電力が供給されているかどうかを知ることができたりする」と述べています。
彼女の体内のインプラントは、電磁波で振動を起こすためそういった物が感じ取れるようです。
またその特殊な身体は日常生活でも活躍するようで、床に落ちたヘアピンなどを拾うのも容易で彼女によると「誰かが落としたイヤリングの裏当ても簡単に見つけられます。これは長年にわたって役に立ってきました」とのこと。
ちなみに、これらのインプラントを体内に埋め込むのは簡単ではありません。
(医者たちが引き受けないからだと思われますが)埋め込み手術の多くはシン氏自身によって行われました。
1人で難しい作業は友人に手伝ってもらったようです。
彼女は自ら皮膚にメスを入れて開き、デバイスを挿入した後、自分で縫合してきたのです。
しかも埋め込んだ後は、インプラントが劣化したり壊れたりしないかを見守る必要もありました。
そして破損した場合はすぐ取り外さなければいけません。
また磁石や電子機器が体中に埋め込まれているシン氏は、MRI検査(強力な磁石と電波を使った検査)を受けることもできません。
この問題について彼女は「定期的にMRI検査が必要な病気にかかったら、インプラントはすべて取り外すつもりだ」と述べています。
そこはあっさりちゃんと取り外すのか、と思ってしまいますが、そこには彼女の新たな野望が関わっているようです。
「そのときは1日に最も多くの摘出手術を行った人間というギネス世界記録を狙います。おそらくそれは私にしかできないことですから」
体内に除去すべき異物が52個もある人間は現在いないため、そのタイトルは彼女のものになるでしょう。
このように自らサイボーグとなったシン氏の生活には、なにかと不便な点が多いように思えます。
しかし彼女自身は、自分の身体と今の生活を楽しんでいるようです。
彼女はギネス世界記録に登録された今でも、「自分の身体は完成していない」と感じており、今後もインプラントの数を増やしていく予定です。