数千年もテンプレが使いまわされている理由
テンプレートは視聴者の共感を呼ぶ「最善手」
1つ目の理由は、キャンベルやヴォグラーが発見したテンプレートが、人類の心を揺さぶる「最善手」であった可能性です。
たとえば、出だしは「日常の世界」から始まることで、視聴者を主人公自身に投影しやすくなり、以降の感情的な共感を得る土台となります。
「日常の世界」以外の世界から語り始める場合、その世界について視聴者はイメージしにくくなり、主人公の境遇や暮らしぶりについての理解度、さらに心理的葛藤への共感が減少してしまいます。
もちろん「日常の世界」から描き始めることは必須ではありませんが「最善手」と言って良いでしょう。
以降の段階も主人公の変容と成長のプロセスを描き視聴者を物語に引き込むための最善手となっています。
認知的な負担を減らしてストーリーの理解を助ける
2つ目の理由は、テンプレを使った理解の加速です。
人間の脳は、新しい情報を処理する際にエネルギーを消費します。
予測可能なテンプレートを使いまわすことは、視聴者の認知的負担を軽減することに繋がります。
そのため視聴者たちは残りのエネルギーを物語の流れや登場人物の心情についての理解することに使えるようになり、結果的に視聴者に深い満足感をもたらすのに役立ちます。
またテンプレートに従うことは、作者の認知的負担をも減らし、オリジナル部分に労力を集中させることを可能にします。
人間は新しいものが嫌いでテンプレートが好き
3つ目の理由が、人類が新しいものよりもテンプレートを好む性質にあります。
人間の本能は、未知よりも既知を好み、安全で快適な環境を求めます。
予測可能な物語はこの本能に訴えかけ、視聴者に安心感で快適な時間を提供します。
一方新しい予測不可能な状況は不安やストレスを引き起こす可能性があり、斬新すぎる要素が多くなると、ストレスも増加し、やがては物語を捨ててしまいます。
SFやパニックホラー、日常系アニメなど好きな人は、同じジャンルの作品を見続けます。
このジャンル選好における偏りも、新しいものよりも慣れ親しんだものを選ぶ人間の性質の1つと言えるでしょう。
「なろう系」として知られるライトノベルやウェブ小説のジャンルは、しばしばテンプレート的な物語展開について批判されます。
しかし共感を呼ぶ最善手と認知的負担の軽減による読みやすさ、安心感のある展開を備えたテンプレートを周到することは、視聴者の需要と合致しています。