口が健康だと「こころ」も健康に!
今回の研究は、2017年11月から2019年1月までに、岡山大学病院 予防歯科外来をメンテナンス目的で定期受診している60歳以上の患者からデータを収集しました。
最終的には、平均年齢75歳の計218名(男性66名、女性152名)を分析対象としています。
チームはまず、患者の「口の状態の良さ」を調べるために、機能歯数(自分の歯の他に義歯やインプラントも含めて、ものを噛むために機能する歯の本数)、舌や唇の動き、舌の力の強さ、噛む力の強さ、食べ物の飲み込みに問題がないかなどを総合的に評価しました。
次に「WHO-5 精神的健康状態表」(サンプル例)を使い、患者の生活満足度や幸福度を調べます。
ここで回答者は過去2週間における自らの幸福度を0〜5の6段階で評価しました。
それと同時に、日常生活での社会参加やコミュニケーションに関して質問(「何でも気兼ねなく話せる人は何人いますか?」「月にどれくらいの頻度で会っていますか?」など)。
そのほか、普段の行動範囲の広さに関する質問も行っています。
(「過去4週間以内に次の場所にどれくらいいたか?」「レベル1:自室や自宅内」「レベル2:ベランダや庭など、家の外」「レベル3:家やアパートの近くの近所」「レベル4:住んでいる町の中にある場所」「レベル5:自分が住んでいる町の外」)
そして食事メニューに基づく栄養状態や身体機能も記録し、これらを「口の状態の良さ」と比較検討しました。
その結果、口の状態の評価が高い患者ほど、日常生活における栄養状態の良さ、行動範囲の広さ、社会的孤立の少なさと関連しており、主観的な生活満足度や幸福度が高いことが明らかになったのです。
チームは、口の状態が良好だと、日常的に摂取できる食事の量や種類が増えるため、それが栄養状態の高さに繋がっていると指摘しました。
栄養状態の高さは、身体だけでなく精神面の健康に寄与することが十分に知られています。
加えて、舌や唇がよく動くことは言語的・感情的な機能や表現が高く維持できるため、他者とのコミュニケーションを活発化させることに繋がるでしょう。
こうした円滑な社会交流は行動範囲を広げることにも関連し、それらが精神的健康を高めると考えられます。
反対に、口の状態の悪さは栄養不足やコミュニケーションの困難を招き、日常的な行動力も衰え、自信の喪失から社会的孤立を含むメンタルの悪化を引き起こすようです。
以上の結果から、口の状態を良好に保つことが健康的に長生きできる要因の一つとなることが分かりました。
口内を健康に保つには「歯磨き」が最も大切な習慣になりますが、これと別に最近の研究では、歯磨きをしっかり行う高齢者ほど、肺炎の発症リスクが低下することが示されているのです。