ADHDは「睡眠の質」が落ちやすい
ADHDとは、集中力が続かない「不注意」、落ち着きがない「多動性」、思いつくとすぐに行動してしまう「衝動性」などを特徴とする発達障害の一つです。
ADHDは12歳以前の小児期から見られ、該当する割合は学童期(6〜12歳)における子供の3〜7%とされています。
また成人期にもADHDと診断される人は相当数います。
大人の場合、多動性や衝動性は目立たなくなるものの、不注意の特性が強くなり、仕事に遅刻したり、大事な書類をどこかに置き忘れたり、会議の予定を失念してしまうケースがとても多いです。
簡単な作業でミスしたり、順序立てて計画を立てるのが苦手といった傾向もあるため、職場だけでなく日常生活にも多くの支障が出てきます。
これまでの研究で、ADHDと診断された人は、子供も大人もの含めて、睡眠の質が低下しやすいことが分かっています。
眠りに落ちるまでに時間がかかったり、入眠した後で何度も目を覚ます傾向があるためです。
特に子供の睡眠不足は成長や認知発達において多大な悪影響となり、深刻化すれば、うつ病や不安症を併発するリスクも高まります。
これに対する従来の対策としては入眠を促す薬物療法がありますが、副作用が起きないとは断言できないため、より安全なアプローチが求められていました。
そこでハルムスタード大の研究チームが注目したのが「重い毛布」です。
重い毛布は「快眠」を促す
重い毛布は「加重毛布」や「加重ブランケット」と呼ばれ、通常の毛布の約3倍以上の重さがあります。
成人を対象としたスウェーデン・カロリンスカ医科大学(KI)の先行研究ではすでに、加重毛布を使うことで不眠が改善され、不安やうつ症状が軽減したという結果が報告されていました(JCSM, 2020)。
加重毛布には重みがある分、体により密着して体と毛布との隙間を減らし、保温性が高まって暖かく感じやすくなります。
また加重毛布による体への適度な圧迫感は、”幸せホルモン”として知られるオキシトシンの分泌を促し、リラックス効果や安心感を生むことが指摘されています。
これはハグしたときに見られる効果と同じです。
その一方で、加重毛布がADHDの子供の睡眠改善にも役立つかどうかは調べられていません。
チームはこの正否を今回の実験で確かめることにしました。