酸とアルコールは混ぜると殺菌力が増す
この研究は、酸に耐性がある土壌微生物や大腸菌O157などの病原性細菌に対して、酸と低濃度エタノールを混合した液体の殺菌効果を調べたものです。
研究者らは実験で、これらの細菌等を、異なるpH溶液やエタノールの濃度で処理し、その生存率を評価しました。
たとえば下の図は、肺炎桿菌(はいえんかんきん)を異なる環境におき、菌の増殖を観察したものです。
肺炎桿菌は口腔や腸における常在菌でとても身近な菌ですが、感染症の原因菌でもあるのです。
できるだけ身体に留まって欲しくないこの菌は、酸性エタノールや酸性度を上げたビール(上の図の黄色い枠内)におくと、ほとんどが死滅してしまいました。
「酸性度を挙げたビール」以外の環境では、たとえば「酸だけのとき」や、「低濃度エタノール単独」では、殺菌効果がほとんどみられませんでした。
これは、ビールやワインなどの低濃度アルコール飲料でも、酸と混合することにより、殺菌効果が期待できることを示唆しています。
じゃあそもそも酸性度の高いお酒を選べば良いのでは…? そう考えたあなたは、正しいのかもしれません。
研究者らによれば、酸性度が高い酒類なら、単独でも殺菌効果が期待できるのだそうです。
「酸性の酒」といえば、ワインです。
「ワインには殺菌効果がある」ということは、実は昔からよく言われており、近年は実験により証明されています。
たとえば、2008年に発表された研究では、食中毒の原因菌であるカンピロバクターは、アルコール度数12.5%でpH 3.6の赤ワインに入れると、99.9%以上死滅することが確認されています。
この効果は、2倍に希釈したワインでも大きくは変わりませんでした。
赤ワインのアルコール度数は10〜13%程度で、複数の有機酸が含まれpHは3〜4ほどです。有機酸とエタノールが組み合わさワインは、それ自体が殺菌効果をもっているようです。