量子物理学ニュース第7位~第4位
第7位:情報力学第2法則はこの世界がシミュレーションであることを示している
情報理論は世界の秘密を暴くのでしょうか?
英国のポーツマス大学(UOP)で行われた研究によって、情報力学第2法則の存在は、私たちが存在する宇宙全体がシミュレーションであることを示すとする、興味深い結果が発表されました。
情報力学は情報は宇宙の基本的な構成要素であり、エネルギーと質量の両方を持つ物理的な存在であると定義しており、既存の情報熱力学とは厳密には異なっています。
また情報力学第2法則においては、あらゆる現象の情報内容は最小限に抑えられる傾向があるとされています。
新たな研究ではこの情報力学の第2法則による情報圧縮が、生物の遺伝情報や原子の情報量、数学的対象性、さらには宇宙全体に対して普遍的に適合できることを示しています。
また情報圧縮が起こるように世界がプログラムされているのは、この世界をシミュレートする演算機の負荷を軽減する目的があるためだと述べられています。
情報力学は、私たちを外の世界と繋ぐ鍵となってくれるのでしょうか?
第6位:二重スリット実験を物理的スリットではなく「時間の切れ目」で再現成功!
英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)で行われた研究によって、光の波としての性質を証明する二重スリット実験の干渉効果が、2つの物理的スリットではなく、同じ場所で2連続で開閉する時間的スリットでも観測できることが示されました。
通常の空間的二重スリット実験では、光子が空間的に離れた2つのスリットを通過すると、右側を通った光と左側を通った光が干渉し合って干渉縞を作ることが知られています。
今回の新たに行われた時間的二重スリット実験は時間的に先(過去)に通った光と、時間的に後(未来)に通った光が相互作用し干渉縞を作ることを示唆しています。
量子力学の不思議さを象徴する二重スリット実験の肝である「スリット」が空間的隔たりだけでなく時間的隔たりにおいても機能するという結果は非常に驚きです。
どうやら量子世界では「過去も未来も」も曖昧になってしまうようです。
第5位:量子もつれを使い「未来の観測で過去を変える」タイムトラベルのシミュレーションに成功!
量子もつれは時間を超えるのでしょうか?
英国のケンブリッジ大学(University of Cambridge)で行われた研究によって、量子の世界では未来で行われる観測の力で、過去の観測結果をタイムトラベルしたかのように捻じ曲げられることが示されました。
SFでは、過去を変えるためにタイムマシンに乗って過去の世界に行くことがあります。
これまでの研究では、そのような時間遡行が行われた場合に使用される原理や、祖父殺しのパラドックスを避ける方法などが考察されてきました。
一方、今回の研究では「量子もつれのシステムがタイムトラベルだった場合」を想定したシミュレーションが行われており、粒子が時間を遡行できた場合に何が起こるかが調べられました。
結果、量子もつれの操作によって、時間遡行のような結果を導けることが示されました。
研究者たちはプレスリリースにて「ギャンブラーや投資家たちも、場合によっては過去の行動を遡って変更し、現在の結果を改ざんできる」と述べています。
第4位:東京大学が「因果を打ち破って充電」する量子電池を発表
東京大学で行われた研究により、因果律の壁を打ち破る新たな手法によって、従来の量子電池の性能限界を超えることに成功しました。
これまで私たちは古典的な物理学も量子力学でも「AがBを起こす」と「BがAを起こす」いう因果律が存在する場合、一度に実行できるのは片方だけであると考えていました。
しかし新たな充電法では、2つの因果関係を量子的に重ね合わせる方法が用いられており、「AがBを起こす」と「BがAを起こす」という2つの因果の経路から同時に充電することに成功しました。
これをあえて多世界解釈で表現すれば、1つの量子電池に対して「充電器A➔充電器Bの順で接続された世界」と「充電器B➔充電器Aの順で接続された世界」の2つの世界から充電が行われたと言えるでしょう。
研究者たちはこの方法を使えば、既存の量子電池の充電能力を高めることができると述べています。
記事では因果律を打ち破る不確定因果順序(ICO)と量子電池の基本的な仕組みを解説し、その後、2つの量子世界の現象を組み合わせた今回の研究結果について紹介しています。