量子物理学ニュース第3位~第1位
第3位:1マイクログラムの目視可能サイズで「シュレーディンガーの猫」の類似実験に成功!
スイス連邦工科大学(ETH Zurich)で行われた研究によって、肉眼でギリギリみえる1マイクログラムのサファイア結晶をシュレーディンガーの猫に期待されていた「量子的な重ね合わせ状態」にすることに成功しました。
これまで量子的な重ね合わせが確認されてきたのは、主に目に見えない小さな世界の物体であり、既存の重ね合わせの最大記録も原子2000個ほどにすぎませんでした。
しかし新たな実験で重ね合わせにされた「1マイクログラムのサファイア結晶」には1京個もの原子が含まれており、肉眼でも認識できるレベルに達しています。
研究者たちは実験手法を改良することで、量子的重ね合わせが達成できる限界値を探ることが可能になると述べています。
ミクロな世界を支配する量子力学は、マクロな世界をどのように変えていくのでしょうか?
第2位:現実を歪める量子物体「アリスのリング」を生成することに成功!
『不思議の国のアリス』では、主人公なアリスが迷い込んだ奇妙な世界が描かれています。
この「不思議の国」では常識的な物理法則が崩壊しており、物体のサイズや重さが変化し、時間の流れも簡単に逆転してしまいます。
しかし常識的な物理学の崩壊は、なにも不思議の国の専売特許ではありません。
量子力学の世界では、1つの物体が2つの場所に同時に存在し、何もない場所から粒子が現れては消えていくことが知られています。
そして誰かが観察をしない限り、世界を飛び回る粒子の状態を確定させることもできません。
ですが今回、米国のアマースト大学(AC)によって世界で初めて人工的に作られた「アリスのリング」は数ある量子世界の不思議さの中でも格別なものでした。
「アリスのリング」は物体が通過するとき、またはそれを通して他の物体をみたとき、その性質を変化させるという、極めて異常な性質があることが示唆されたのです。
研究者たちは「アリスのリング」を研究することで宇宙の最も深い構成要素である「物質と情報」の解明につながると述べています。
物体の性質を書き換えてしまう「アリスのリング」の正体とは、いったいどんなものなのでしょうか?
第1位:燃料がいらない!?日本を含む研究チームが史上初の「量子エンジン」試運転に成功!
EMドライブと違って、こっちは本物です。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)などで行われた研究により、量子状態の変化によって仕事量をうみだす量子エンジンの史上初の実証が行われました。
量子エンジンは通常のエンジンとは異なり、燃料や酸素といった外部の供給を必要とせず、密閉されたピストン内部の量子状態の変化だけで仕事量を持続的に出力することが可能です。
通常のエンジンがガソリンの爆発という古典的な物理現象に依存するならば、量子エンジンは量子状態の変化という量子力学的な物理現象からエネルギーを抽出していると言えるでしょう。
量子コンピューターは演算能力において魔法のような能力を発揮しましたが、量子エンジンではいったいどんな仕組みでエネルギーを出力しているのでしょうか?