アイコンタクトで互いの関心度は高まるのか
関係性で変わる視線パターンの結果から考えると、相手を恋愛対象として認識している場合、アイコンタクトが多くなる状況が考えられます。
このような目が合う現象は互いの関心度を高めるような作用があるのでしょうか。
「Comuters in Human Behavior」に投稿された、蘭ティルブルフ大学のエメリン・クローズ氏(Emmelyn Croes)らの研究では、恋愛関係の発展におけるアイコンタクトの役割を調べています。
彼らは男子大学生29名と女子大学生28名を集め、スピードデートを実施しました。
スピードデートとは、決められた時間内(5分)に男女が席を移動し、気に入った相手を見つけるシステムのことで、恋愛に関する心理学研究でもよく用いられます。
普通は対面で行われますが、実験者は対面のほかにビデオ通話条件(アイコンタクトなし)とビデオ通話条件(アイコンタクトあり)の3つの条件を設けています。
ビデオ通話のアイコンタクトなし条件では、画面上の相手の顔を見ると目線がカメラ目線にならない仕様になっており、アイコンタクトあり条件では、The Eye-Catcherというデバイスで参加者の視線をトラッキングし、画面を見ている時は相手と目が合っている感覚を作り出しました。
そしてスピードデート後に恋愛対象として相手をどう感じているのかを評価してもらっています。
分析ではスピードデートでの自己開示の回数、相手の情報を引き出す質問の数、親密さ、相手に対する恋愛対象としての評価が対面、アイコンタクトの有無でどう変わるのかを調べました。
実験の結果、アイコンタクトありのビデオ通話条件は、アイコンタクトなしのビデオ通話条件と比較して、自分の情報を相手に伝える自己開示が増加していました。
これはアイコンタクトがあると、相手の自分に対する興味に確信が持て、自発的に自分のことを話しやすくなっている可能性があります。
一方でアイコンタクトなしのビデオ通話条件では、相手の情報を聞く行動が増えていました。つまり目が合わないと相手がどういう人かうまく判断できなくなる可能性があります。
しかしアイコンタクトが多いからといって、相手に対する恋愛感情が高まる現象は確認されませんでした。
研究チームは「会話でのアイコンタクトが多ければ多いほど相手への好意を非言語的に表現できると考えられる。そのためアイコンタクトは初対面の相手が自分をどう思っているかという問題の不確実性を減らすことに貢献している可能性がある」と述べています。
つまり目が合うことは直接的には恋愛感情を伝えているわけではありませんが、相手の自己開示を引き出し、親密な関係を築くことを助けていると言えるでしょう。
相手が自分をどう思っているか? は誰もがコミュニケーションの際に気にしている問題です。視線はそうした不安を解消する助けになる可能性があり、また視線をうまく使うことで非言語的に相手に気持ちを伝えることもできるかもしれません。