ヒトの毛や爪の遺伝的起源はどこにある?
陸上の脊椎動物に見られる「毛」と「爪」は、皮膚を作る表皮が角質化して生じたものであり、ともに「ケラチン」というタンパク質を主成分としています。
毛と爪の進化は、生物が陸上に進出する上で欠かせない器官でした。
毛は乾燥した環境による水分喪失や太陽の直射日光、および障害物からの保護の役割を果たし、爪は獲物の捕獲や天敵の撃退、陸地や樹上での移動にとても有用です。
では、これら毛と爪の進化の起源はどこにあるのでしょうか?
そこでウィーン医科大学の研究チームは、ベルギー・ゲント大学(Ghent University)と協力して、両生類の「ネッタイツメガエル(学名:Xenopus tropicalis)」を詳しく調べてみました。
ネッタイツメガエルは西アフリカの熱帯雨林の小川に生息する水生のカエルで、四肢の先に「かぎ爪」を持っていることが知られています。
チームがネッタイツメガエルのかぎ爪の成分を調べたところ、哺乳類の毛や爪の主成分とまったく同じではないものの、非常によく似たケラチン様分子からできていることが特定されました。
さらにかぎ爪の形成に関わる遺伝子を分析した結果、ヒトを含む哺乳類と同じ「Hoxc13遺伝子」によって制御されていることが判明したのです。
では、このHoxc13をピンポイントでノックアウト(遺伝子破壊)すると、ネッタイツメガエルには何が起こるでしょうか?