ツルツルしたカエルに「毛の遺伝子」が保存されていた!
Hoxc13は体毛や爪の形成を調節する遺伝子であり、Hoxc13に遺伝的変異を持つ患者では、毛髪および爪の成長に欠陥が生じることが知られています。
そこで研究チームは、Hoxc13をノックアウトしたネッタイツメガエルを作成してみました。
その結果、Hoxc13を失ったカエルは通常個体とは違い、かぎ爪が形成されなくなったのです。
これを受けて、研究主任のレオポルド・エッカート(Leopold Eckhart)氏は、ヒトの体毛や爪の形成に関わる遺伝的プログラムの種(たね)が、両生類と哺乳類の共通祖先の時代にすでに植え付けられていたことを示していると述べました。
その遺伝的プログラムが出現した正確な時期まではわかりませんが、エッカート氏らは、約3億7500万年前に陸上に進出した最初期の四肢動物に遡るのではないかと推測しています。
流れとしては、下図に示すように、まずHoxc13遺伝子が最初に古代魚のヒレを形成するものとして生まれ、次いで四肢動物が陸上に進出する中で、つま先を保護する役割として「ケラチン様分子(青)」が誕生。
そして四肢動物から哺乳類や両生類が派生するプロセスにおいて、ケラチンが爪や毛の形成に使われるようになったと考えられています。
おそらく、Hoxc13遺伝子が制御するヒレや爪の形成プログラムは、哺乳類が陸に進出する過程で、毛の発達のために修正されたのでしょう。
ネッタイツメガエル自体は毛を1本も持っていないツルツルの生き物ですが、彼らの内に、ヒトの体毛を制御する遺伝子が共有されていたとは驚きの事実です。
もしネッタイツメガエルが環境の変化に応じて陸に上がってくることがあれば、哺乳類のようにフサフサした毛を生やすことも不可能ではないのかもしれません。
他方で研究チームは、鳥類の羽毛が同じHoxc13遺伝子によって制御されているかどうかはまだ確認できていないといいます。
ただ鳥類の羽毛もヒトの毛と同じケラチンを主成分としているので、可能性としては十分にあり得るでしょう。