テングザルは大きな鼻による鳴き声でメスたちを引き付けている
テングザルは、オナガザル科に分類される種であり、ボルネオ島(インドネシア・マレーシア・ブルネイの3カ国の領土)に生息しています。
マングローブ林、湿地林、河辺林などに住んでおり、泳ぎが得意です。
そして、まるでテングのような「大きくて長い鼻」を持つことで有名です。
オスもメスも長い鼻を持っていますが、オスの方が立派な鼻を持っています。
通常、彼らは1匹のオスと、数匹のメス、そしてその子孫で構成される小規模なグループを形成します。
しかし、オスは中年になるまでメスたちを引き付けるチャンスがあまりなく、年を重ねるにつれて鼻も大きくなり、その大きさに応じて、メスたちにモテるようになります。
なぜ、大きな鼻のオスはモテるのでしょうか。
その理由を調査するため、バロリア氏ら研究チームは、テングザル38匹の頭蓋骨の3Dスキャンを分析しました。
その結果、オスの鼻腔(鼻の内側の空間)は、メスよりもはるかに大きく、メスとは形状も異なると分かりました。
そしてこの大きな鼻腔のおかげで、オスは鼻腔内での共鳴により、より低くて大きな音を出すことができるのです。
オスのサルは、この低くて大きな鳴き声によって、自分の健康と優位性を示すことができ、より多くのメスを引き寄せることができます。
またこの鳴き声はオス同士のコミュニケーションにも欠かせず、交尾の際に他のオスを追い払うのにも役立つといいます。
一方で、成体のテングザルのオスは、年齢を重ねることで鼻が大きくなるものの、鼻腔には変化がないことも分かりました。
このことは、単に鳴き声だけでなく、大きな鼻という視覚的シグナルも、「モテる」要素であることを示唆しています。
人間にとっては「醜い鼻」かもしれませんが、テングザルたちにとっては、魅力的な見た目と鳴き声を作る「美しい鼻」だったのです。