ショート動画中毒者は「社会不安レベル」が高まっていた
研究チームはショート動画中毒が生活の質に及ぼす影響を明らかにすべく、中国・山東省の高校1・2年生を対象に調査を行いました。
参加者は合計1629名で、男子が831名、女子798名で年齢は16〜17歳となっています。
調査では専用の質問票を用いて、ショート動画への依存度、睡眠の質、社会不安レベルを評価しました。
そしてデータ分析の結果、ショート動画の視聴時間が多い生徒ほど、睡眠の質が悪く、社会不安のレベルが高くなる傾向にあったことが確認されたのです。
また社会不安がショート動画中毒と睡眠の質の低下を媒介する傾向も見られたことから、ショート動画中毒になることが最初に社会不安を引き起こし、それが原因で睡眠の質が悪くなっている可能性が示唆されました。
しかしなぜ、ショート動画の視聴時間が増えると、社会不安に繋がるのでしょうか?
本調査はあくまで相関関係を示したものであり、因果関係までは明らかにされていませんが、これまでのショート動画の影響に関する研究報告などを含めて、いくつかの考察がされています。
その1つとして、ショート動画の視聴が他者と自分を比較する機会を増やしてしまうという問題です。
ショート動画ではモデルのような同年代が登場するものも多く、このためにショート動画をよく視聴する若者ほど、自身の身体イメージが悪化する(自分はスタイルが良くないと考えてしまう)傾向が報告されています。
また他者の生活が垣間見えたり、成功を目の当たりにする場合もあり、これが自身の状況との比較によって不安を生む可能性が指摘されています。
こうした問題は、どのコンテンツでも起こりうることですが、短い動画を介して、短いスパンで大量に目にしていくことで、自身に対する不安感を増大させる恐れがあるというのです。
また、動画視聴に時間を使いすぎると、後になって有効に時間を利用できなかったという焦燥感を感じる人もおり、これも不安感の増大に関与しています。
なにより、短い動画を連続して視聴していく行為は、考えているよりも精神的な疲労感を蓄積させやすいため、暇つぶしや満足感を得るために見ていたつもりでも、気付いたらひどく疲れていてネガティブな思考に陥りやすい状態になっている場合も多いようです。
自分では楽しんでいるつもりなのに、自覚なく不安感を増大させていると言われると、少し恐ろしい感じがしますね。
そのため研究者らは、ショート動画中毒を解消して、生活の質を維持するために何らかの対策を講じる必要があると考えています。