フィンランドはなぜ「幸福な国」なのか?

「幸福度ランキング」は、国連SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)らによって毎年発行されている『World Happiness Report』に基づいて毎年発表されています。この報告書では、世界各国の人々に「あなたの人生を0(最悪)から10(最高)で評価するとどのくらいですか?」と尋ね、その平均値をもとに国ごとの“幸福度”を数値化しています。
これはGDPなどの客観的な経済指標ではなく、人々が自分の人生をどう感じているかという実感にもとづいたものです。
フィンランドはこの評価で、2018年から2024年まで7年連続で世界1位を獲得しています。要因としては、所得や健康寿命、社会的支援、自由度、寛容さ、政治・行政の腐敗の少なさなど、総合的な社会環境の良さが挙げられます。
しかしその一方で、フィンランドは長年にわたり「欧州の中でも自殺率の高い国」として知られてきました。とくに1980年代後半には、自殺率が世界でも最悪レベルに達し、人口10万人あたり約30人が自ら命を絶っていた時期もあります。男性や高齢者の自殺率が突出して高かったのも特徴です。
こうした事態を受けて、1990年代からフィンランド政府は「国家自殺予防プロジェクト」に取り組み、精神医療サービスの拡充やアルコール依存対策、学校教育での早期介入など多面的な支援策を実施しました。その結果、2020年代には自殺率が約半分にまで減少し、人口10万人あたり14〜15人程度にまで下がっています。
それでもなお、フィンランドの自殺率はEU平均よりも高い水準にあり、特に一部の層では深刻な問題が続いています。
こうした状況は、「国としての幸福度が高くても、それが自殺率を下げる要因にはならない」という一見矛盾した事実を示唆しています。
では、このような不思議な状況になる原因はなんなのでしょうか?
OECD(経済協力開発機構)の調査によると、フィンランド国民に「生活満足度を10点満点で評価」してもらった場合、「5点以下」の回答をした人の割合は、8〜10%と報告されています。この割合はスウェーデン(5〜6%)より高く、ドイツと同程度であり、日本(約14〜16%)よりは少ない水準です。
一見するとこれは少数派に見えるかもしれませんが、ここに大きな落とし穴があるようです。