ニキビ肌の人は「テロメア」が長かった!
チームは2016年の研究で、イギリス在住の女性1205名を対象に調査を行いました。
参加者の4分の1は過去のある時点でニキビ肌に悩まされていたことがわかっています。
さらに参加者の年齢・体重・身長などを考慮した上で、それぞれのテロメアの長さを調べた結果、ニキビ肌に悩まされていた女性はニキビを経験しなかった女性に比べて、一貫してテロメアが長い傾向にあることが判明したのです。
この関連性は非常に驚くべきものでした。
というのも、ニキビ肌の人に見られる「皮膚の老化の遅さ」がテロメアの長さによって説明できる可能性があるからです。
またそれだけではありません。
チームはニキビに苦しんだ女性とニキビを経験しなかった女性を対象に、皮膚生検(皮膚サンプルを採取して遺伝子検査をすること)を実施。
その結果、ニキビを経験しなかった女性にのみ、アポトーシス(細胞死)を制御する遺伝子経路「p53」が活発に働いている傾向が見られたのです。
反対に、ニキビに苦しんだ女性では遺伝子経路「p53」の活動が低く、細胞死が抑制されている可能性が示唆されました。
実際に確認されたわけではありませんが、ニキビ経験者では肌の細胞死が抑制されることで老化の防止につながっているのかもしれません。
ニキビ肌は将来的に「美肌」に変わる?
この結果を受けて、KCLで遺伝疫学を専門とするシモーヌ・リベロ(Simone Ribero)氏はこう話しています。
「皮膚科医は長年にわたり、ニキビ患者の皮膚がニキビを経験しなかった人よりも老化が遅いように見えることを確認してきました。
これは臨床現場でのみ観察されており、その原因は長らく不明でした。
しかし私たちの発見は、その原因としてテロメアの長さが関連している可能性を支持するものです。
ニキビ患者ではテロメアが有意に長く、肌細胞が老化から保護されていることを示唆しています」
その一方でリベロ氏は「今回の研究は相関関係を示したものに過ぎず、正確な因果関係までは明らかにできていない」と注意を促しています。
一応、ニキビが肌のテロメア短縮を遅らせる理由について、ニキビが多発すると体がこの炎症に対抗しようと抗炎症作用や細胞修復メカニズムを強化しようとするため、これが幹細胞の再生やテロメアの保護として働き、結果的に肌の老化を遅延させている可能性などが予想されています。
ただ、現状は詳しいメカニズムは解明されておらず、その状況は2024年現在もまだ変わっていません。
いずれにせよ、ニキビ肌に悩む人のテロメアが長い傾向にあることは確かなようです。
ニキビ肌に悩んでいる若い人は多いでしょうが、苦しみを乗り越えた先には、将来的に「美肌」が待っているかもしれません。