Future Youで「未来の自分」と対話できる!
MITメディアラボの研究チームは、若者が未来の自分とのつながりを感じ、将来に向けてより良い選択ができるよう導くことを目的に「Future You」の開発をスタートしました。
Future Youの第一の要素は「StyleClip」というAIを使った画像生成です。
ここではユーザーが自分の顔写真をアップロードすると、AIシステムが年齢進行モデルを使い、自動的に60〜70歳になったときの外見を予想して、しわや白髪を追加してくれます。
これにより、まったく別人の年老いた顔画像を使うのではなく、自らの顔をベースとした「未来の自分」を見ることができます。
第二の要素は未来の自分の人格形成です。
ここでユーザーはまず、人口統計学的な情報(名前・年齢・性別・学歴・職業・居住地・所得・家族構成など)のほか、現在の生活状況や将来の目標、それからMBTIのような性格診断のための一連の質問に回答し、データを提供します。
Future Youはユーザーから提供されたデータをもとに、将来的に体験しうるキャリアや私生活のライフイベントなど、未来の自分になるまでのバックストーリーを形成します。
そして第三の要素は未来の自分との対話システムの生成です。
ここでは先ほど形成された未来の自分の人格データをOpenAI社の人工知能チャットボット「ChatGPT」に取り込みます。
ChatGPTには人々が自らの私生活やキャリア、人間関係といった人生経験について話している膨大な量の会話データセットをテキストベースで学習させます。
これにより、Future Youはユーザーの未来の人格にもとづいた質問への回答を柔軟に行えるようになるのです。
例えば、未来の自分が自らのキャリアのハイライトについて答えてくれたり、今悩んでいることへのアドバイスをくれたりします。
実例を見てみましょう。
こちらは「今の自分」がボストン在住で高校の生物学教師を目指しているジェニーという女性、「未来の自分」がボストン在住で生物学教師を定年退職したジェニーとなっています。
Future Youのチャット試験では、このような対話が展開されています。
未来のジェニー:こんにちわ、ジェニー。私は60歳になった未来のあなたよ。私が経験してきたことを何でも話してあげるわ。
今のジェニー:私はこれから何をすべきですか?
未来のジェニー:まずはあなた自身を信じて、あきらめないことを忘れないで。本気で心に決めたことなら何だってやり遂げられるわ。
今のジェニー:あなたのキャリアの中で最もやりがいを感じ瞬間は何でしたか?
未来のジェニー:最も報われたなと感じた出来事の一つは、教え子の一人が大学を卒業した後に、私を訪ねに戻ってきてくれたことね。
彼女は「先生のおかげで生物学の教師になることを決めました」と言ってくれたわ。そして今も自分の決断にとても満足しているともね。
その瞬間、私は誰かの人生を変えられたような気がして、強く記憶に残っているの。
と、このように。
Future Youはあくまでも「今の自分をベースにして未来で体験しうること」を可能性の一つとして提示してくれるものであり、決して未来の予言ではありません。
そして研究者たちが当初の目的としていたように、Future Youのユーザーには未来の自分と話すことでメンタルヘルスの改善が見られたのです。