地球最古の「動物」の一種か?
新種の古生物の化石が見つかったのは、南オーストラリア州のアウトバック(オーストラリアの内陸部に広がる砂漠を中心とする広大な人口希薄地帯のこと)にある「ニルペナ・エディアカラ国立公園(Nilpena Ediacara National Park)」です。
この公園はエディアカラ生物群の化石を産出する場所として有名で、その貴重な化石記録からユネスコ世界遺産への登録が検討されています。
研究チームはこの場所で20年以上にわたり発掘調査を続けてきました。
そして最近、今まで知られていなかった新種の古生物の化石を発見に成功したのです。
この生物は丸くて平たいルンバのような見た目をしており、大きさは成人の手の平くらいあります。
体は無数の細胞でできた多細胞生物であり、体の表面にはクエスチョンマークのような器官があって、この生物の体が左右非対称であることを示していました。
化石は10個以上見つかっており、体組織をそのまま残したものもあれば、この生物の跡だけを残した痕跡化石もありました。
それらをもとに復元したのが上の画像です。
研究者らはこの特徴的な「?」マークを踏まえて、学名を「クアエスティオ・シンポソノルム(Quaestio simpsonorum)」と命名しています。
ボディプランの左右非対称性は生物の進化上、とても重大な意義を持っています。
多くの生物の体は外見的にほぼ左右対称ですが、体内を見ると、ほとんどの臓器の形や配置が左右非対称になっています。
これは生物たちが特定の機能や生態に適応し、生活の効率を上げるための進化的なメリットがありました。
例えば、私たちの心臓は体の左側に位置していますが、これによって全身に血を送り出す血液循環の効率が上がっているのです。
左右非対称性は外見にも現れており、カニやエビの一部は一方の爪を大きくさせることで闘争や防衛を有利にしました。
ボディプランの左右非対称性は、内臓のスペースを効率的に活用して、器官が互いに干渉せずに機能できるようにしたり、体の一部を大型化させたり、配置を変えることで生存競争を有利に進めることができます。
このように左右非対称性は生命史においてとても高度な進化だったのです。
研究者らは約5億7500万年前にいたクアエスティオ・シンポソノルムこそ、左右非対称性を進化させた最初期の動物だったろうと考えています。
さらにチームは本種の痕跡化石から、クアエスティオ・シンポソノルムが海底を這いずって移動していた確かな証拠を発見しました。
ルンバほど速くはなかったでしょうが、これは本種が自由な移動能力を持っていたことを示します。
これほど大昔の時代の化石において、左右非対称性や移動能力をこれほど明瞭に示した古生物の化石は見つかっていません。
そのことからチームは、クアエスティオ・シンポソノルムが最初期に登場した「動物」の一種と見て間違いないと話しました。
その後、生物たちは約5億年前のカンブリア爆発をきっかけに劇的な進化を遂げ、体の大型化や複雑化、遊泳を主とする移動能力の向上を見せています。
この進化的爆発において、今日に見られる動物の「門」がすべて出揃うことになりました。
こうした豊かな動物相の開花は、クアエスティオ・シンポソノルムをスタート地点に始まったのかもしれません。