忙しくなるほど、ADHD症状は緩和する
ADHD(注意欠如・多動症)は主に不注意・多動性・衝動性の3つを特徴とする発達障害です。
その多くは12歳前後の小児期に発症しますが、成人後になっても新たにADHDと診断されるケースは少なくありません。
特に大人のADHDでは多動性や衝動性の症状こそ薄まるものの、不注意や集中力の欠如が強く目立ち始め、遅刻や物忘れ、仕事中のうっかりミスが増えやすくなるのです。
一方でADHDは発症すると、以後一貫した重い症状がずっと続くものではないことがわかっています。
時期や状況によって、ADHD症状が影を潜めてほとんど寛解したように見えることもあれば、急に症状が重くなる時期が現れるなど、変動が見られるのです。
そしてワシントン大学医学部による最新研究では、特にADHD症状が緩和する時期と密接に関連している要因が新たに判明しました。

研究チームは今回、ADHDと診断されている米国およびカナダ在住の患者483名を追跡した長期データを分析しています。
この調査はそれぞれの被験者(調査開始時の平均年齢は8歳)を16年間にわたって追跡したものです。
その間に被験者の63.8%はADHD症状の変動を経験していました。
これらの患者は追跡期間中にADHD症状をほとんど示さない寛解期が平均3〜4回訪れ、その後数年以内に症状が再発しています。
チームはその寛解期に見られる被験者の生活状況データを比較分析して、何らかの関連性がないかどうか調べました。
するとADHD症状の寛解期は人生の忙しい時期に現れる可能性が高いことが判明したのです。
例えば、追跡期間に寛解を示した被験者は、幼い子供ができて子育てに忙しくなっていたり、親元から離れて独立した生活を始めたり、新たに家族ができて金銭的義務を負ったため、仕事が増えるなどしていたのです。

アメリカ在住の女性、ソフィー・ディディエさん(24)もその一人です。
ソフィーさんは15歳のときに医師からADHDと診断されました。
高校に入学した頃は特に症状がひどく、授業に集中するのが困難で落ち着きがなく、延々と喋り続けてしまうため、先生によく注意されていたといいます。
しかしソフィーさんはあることに気づきました。
学校の課題や部活動のラクロス、その他の課題活動が立て込んでスケジュールが厳しい時期になるほど、ADHD症状が緩和していたのです。
「毎日の日課を懸命にこなしているときほど心が安定し、物事をうまくコントロールできているような気がしました」とソフィーさんは話しています。
では、なぜ忙しくなるほどADHD症状は影を潜めるのでしょうか?



























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