匂いの減少のメカニズム
猫の尿が匂う理由の鍵を握る「フェリニン」は、猫特有の代謝によって生み出される物質です。
猫の体内では、3-メチルブタノール-グルタチオン(MBG)という化合物が腎臓を通じて代謝され、最終的にフェリニンが生成されます。
フェリニンは尿中で分解し、揮発性の硫黄化合物を放出します。
この硫黄化合物こそが、猫の尿の強烈な匂いの正体です。
しかし、腎臓が正常に機能していない場合、この代謝サイクルが崩れます。
慢性腎臓病などで腎機能が低下すると、MBGがフェリニンに変換されるプロセスが阻害され、尿中のフェリニン濃度が大きく減少します。
今回の研究では健康な猫34匹と腎臓病を患う猫66匹を対象に尿中のフェリニンやMBGの濃度などが分析されました。
その結果、腎臓病の猫では尿の匂いが薄くなっていることが判明。
さらに腎機能が進行的に悪化すると、フェリニンがほとんど生成されなくなり、尿の匂いはほぼ無臭に近づいてしまうことも明らかになりました。
この成果は、ネコの尿臭の変化を通じて腎臓病の兆候を早期に察知できる可能性を示しています。
具体的には、飼い主がトイレ掃除の際に「尿臭が以前より弱くなった」「ほとんど感じられなくなった」といった変化に気づくことで、腎臓病のリスクを早期に察知できる可能性があります。