脊髄性筋萎縮症で苦しむ乳児たち
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、遺伝性の神経筋疾患であり、主に運動ニューロンが変性・消失することで筋力が低下していく病気です。
患者は徐々に自発的な運動ができなくなり、重症の場合は呼吸不全を引き起こし、生命を脅かします。
特にSMA1型は乳児期に発症し、適切な治療がなければ2歳までに亡くなるケースが多いとされています。

そしてあるケースでは、胎児の段階で既に症状が見られます。
SMAの治療法は近年進化しており、いくつかの薬剤が開発されています。
しかし、従来の治療は出生後に開始されるため、すでに進行してしまった神経の損傷を完全に回復することは困難でした。
病気が進行する前に対処できれば、より良い結果を得られるのではないか──そう考えた研究者たちは、新たな試みとして胎児のうちに治療を始める方法を検討しました。
そこで採用されたのが、経口薬「リスジプラム」です。
長年の研究により、リスジプラムはSMAの治療に安全かつ効果的であることが示されており、薬の投与を開始する年齢が若いほど、全体的な結果も良好です。
そして研究チームは、母親にこの薬を服用してもらい、胎盤を通じて胎児に有効成分を届けようとしました。
この方法ならば、胎児への負担を最小限に抑えつつ、より早い段階で治療を開始できる可能性があるのです。