PDFとは何か?

PDF(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)は、一言でいうなら「どのパソコンやスマホでも同じ形で見られるデジタルの紙」です。
もともとは、「コンピューターが違うだけで文字や画像の配置がズレる」という悩みを解決するために、1993 年にアドビ社の創業者ジョン・ワーノック氏が生み出しました。
たとえば、ある人が作った書類を別のパソコンで開くと文字化けしてしまう――そんなトラブルを根本的に減らしたのが PDF の最大の特徴です。
最初は「ファイルサイズが大きい」「インターネット回線が遅い」という理由で普及しにくかったのですが、1996 年にアメリカ国税庁(IRS)が税務書類として公式に PDF を採用したことで注目度が上がりました。
さらに 2008 年にはオープンスタンダードとなり、誰でも無料で扱えるようになったため、一気に世界中に広まります。
いまでは、ビジネス用の契約書からアーティストの作品集、そして宇宙飛行士が参照する船内マニュアルに至るまで、実にさまざまな現場で利用されています。
PDF Reader Pro(2023年)によると、年間で約 2.5 兆件もの PDF が作られていると推計されています。
技術的には「1インチ=72ポイント」という座標系を使って、文章や画像、図表などを正確な位置に固定する仕組みが土台になっています。
紙をスキャンしてデータ化したような“画像”とは違い、テキストや図形をベクター形式で記録するため、拡大・縮小してもレイアウトが崩れにくいのです。
さらに、ハイパーリンクを埋め込んだり、フォームに文字を入力できたりと、ただの“電子の紙”を超えた機能も備えています。
こうして“どんな環境でも同じように見える”という便利さのおかげで、PDF は私たちの生活や仕事の裏側に広く浸透してきました。
そんな「もう当たり前すぎる」存在となった PDF ですが、一時期「PDF は一辺 381 キロメートルまでしか作れない」という噂がネット上で大いに注目を浴びました。
381 キロメートルといえば、アメリカのニューヨーク州やギリシャの面積に近く、ドイツの約 40% に相当すると言われます。「もし紙に印刷するとしたら、とんでもない大きさだ」と興味本位で話題にされ、ツイートや雑学サイトがこぞってネタにしたのです。
(※PDF バージョン 7 の最大サイズ: 381 km × 381 km。https://t.co/Sxz37HMYD1 pic.twitter.com/a4bkgZAjgq)
驚く人もいれば、「そもそも PDF を何百キロも大きくして何に使うの?」と首をかしげる人もいたでしょう。
しかし今回、381キロメートルを超えて、観測可能な宇宙より大きな一辺が37兆光年ものPDFの作成が行われたとの報告がなされました。
いったいなぜこのような滅茶苦茶な数値が実現したのでしょうか?