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Credit:clip studio . 川勝康弘
biology

人類が「第6の大量絶滅」を引き起こしているとはまだ言えない

2025.06.04 22:00:16 Wednesday

近年、「地球はいま第6の大量絶滅期にある」という主張が広く語られています。

しかし、アメリカ・アリゾナ大学などの研究チームがこの説を詳細に検証した結果、現時点のデータでは「第6の大量絶滅が進行中」と断言するのは早計だとする論文を発表しました。

研究者らはその根拠として7つのポイントを挙げており、現在進行する生物多様性の危機は過去の「大量絶滅」と同列に論じられる段階にはない可能性が示されています。

人類が引き金を引いたと言われていた“終末シナリオ”は本当に思い込みなのでしょうか?

研究内容の詳細は『Trends in Ecology & Evolution』にて発表されました。

Questioning the sixth mass extinction https://doi.org/10.1016/j.tree.2025.01.002

ビッグファイブを超えるのか? 大量絶滅説を再点検する理由

ビッグファイブを超えるのか? 大量絶滅説を再点検する理由
ビッグファイブを超えるのか? 大量絶滅説を再点検する理由 / 過去5回起きたとする大量絶滅では海あるいは陸のどちらかは75%以上の絶滅を起こしています/Credit:clip studio . 川勝康弘

地球の歴史では、大量絶滅(比較的短期間に地球上の種の大半が失われる現象)が過去に5回発生したと考えられ、「ビッグファイブ」と呼ばれます。

近年、人類の活動によって「6回目の大量絶滅」が進行しているとの指摘が多くの研究者によってなされてきました。

実際、このテーマに関する有力な著書や論文が発表されており、多く引用されています。

こうした流れから、一見すると「第6の大量絶滅」は科学界で既定路線のようにも受け取られてきました。

しかし今回、米アリゾナ大学の生態学者ジョン・ウィーンズ教授らの研究グループはこの定説に異を唱えました。

論文の著者らは「地球が重大な生物多様性の喪失に瀕しているのは確かだが、現在の生物多様性危機を“大量絶滅”と見なすことには懐疑的だ」と述べており、その真偽を検証することが本研究の目的でした。

過去の大量絶滅を定義する基準(例えば全生物種の75%が失われること等)と照らし合わせて現在の状況がそれに当てはまるかどうか、また第6の大量絶滅を主張する先行研究の根拠に問題がないかを、批判的に評価しました。

その結果、「第6の大量絶滅」が起きていると断言するには少なくとも7つの疑問点があることが示されたのです。

次ページ7つの論点で人類由来の大量絶滅を否定する

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