1億年前の「胃の中」から読み解く真実
この発見の舞台となったのは、オーストラリア東部・クイーンズランド州の内陸部にある「ウィントン層」と呼ばれる白亜紀中期(1億100万〜9400万年前)の地層です。
2017年、古生物学者たちはここで、首長恐竜「ディアマンティナサウルス・マチルデ(Diamantinasaurus matildae)」の比較的完全な化石を発掘しました。
注目すべきはその腹部にあった異常に硬化した岩層です。
そこには植物の化石が密集しており、同時に竜脚類の皮膚の鉱化組織も見つかりました。

この層を調査したチームは「これこそが恐竜の腸内内容物=コロライトである」と判断。最新のX線CTスキャンや化学分析技術を用いて詳細な解析を行いました。
その結果、腸の中からは多種多様な植物片が発見されました。
具体的には、
・針葉樹の葉
・種子シダ植物の果実と見られる構造
・被子植物(花を咲かせる植物)の葉
などが確認され、それらが消化中の状態で残されていたのです。
驚くべきことに、これらの植物片は「ほとんど噛まれていない」状態で、裂かれただけのように見えるものが多数存在していました。
つまり、首長恐竜は巨大な歯で植物を引きちぎった後、細かく噛み砕くことはせずに、そのまま呑み込んでいたと考えられるのです。
この「丸呑みスタイル」は、首長恐竜たちが腸内に共生する微生物を使った発酵で植物を消化していたことを示唆しています。