砂糖は摂取方法で影響が異なる?

これまでにも、砂糖の過剰摂取が肥満や糖尿病などの生活習慣病につながることは広く知られてきました。
とくに「砂糖入り飲料(SSB:Sugar-Sweetened Beverages)」が健康に悪影響を及ぼすことは、多くの疫学研究で指摘されており、一般にもペットボトル症候群という呼び方で広まっています。
しかし、私たちは糖を飲み物からだけでなく、果物、ヨーグルト、パン、お菓子など、さまざまな食品から摂取しています。
なぜペットボトルの飲み物が別枠で特に注意されているのでしょうか?
実のところこの分野の研究では「同じ糖でも、その“摂り方”によって体への影響は違うのではないか?」という疑問があります。
つまり、「飲む糖」と「食べる糖」は、その影響を同じように扱うべきではないというのです。
この疑問には、すでにいくつかの研究が重要な違いを示しています。
たとえば、飲料に含まれる糖分は、食物繊維や脂質、たんぱく質といった吸収を緩やかにする成分を含まないため、消化吸収が非常に速く、血糖値を急激に上昇させる傾向があります。
フルクトース(果糖)を液体の形で摂取した場合には、体内での吸収が非常に速いため、肝臓での脂肪合成(de novo lipogenesis)が過剰に活性化されやすくなることも示されています。

また、噛まずに摂取できる液体は満腹感を与えにくいため、カロリー摂取が増えやすいことも知られています。
とくに夏は、無意識のうちに清涼飲料水の摂取量が増えやすい季節です。暑い日には、冷たい炭酸飲料やスポーツドリンクを一気に飲み干してしまう人も少なくないでしょう。
このように食べる場合と異なり、砂糖を飲むという行為は代謝の偏りを生みやすく、インスリン抵抗性の増加や血糖コントロールの悪化といった症状を引き起こしやすくなると予想されているのです。
こうした背景から、今回の研究チームは、「糖の量」だけでなく、「糖の摂取形態」に着目し、その影響について調査を行いました。
彼らは世界中の大規模な疫学調査から約80万人分のデータを集め、「飲む糖」と「食べる糖」が、それぞれ2型糖尿病の発症リスクにどのように関係しているかを精密に分析しました。
これにより研究は、これまで「砂糖は体に悪いもの」とひとくくりに考えられがちだった問題に対して、「摂り方によってリスクが大きく変わる」可能性を正確に示そうとしたのです。