突如現れた「宇宙最強の爆発」と、その追跡劇
ガンマ線バースト(GRB)とは、宇宙で最も激しいエネルギーの爆発現象のひとつです。
数秒から数分の間に、太陽が一生かけて放つエネルギー量を一気に放出する――そんなスケールの爆発が、遠くの宇宙でランダムに起こっています。
その中でも、2022年10月9日に発生した「GRB 221009A」は別格でした。
あまりの明るさに複数の観測装置が一時的に機能不全を起こしたほどで、世界中の天文学者の間で「BOAT(Brightest Of All Time=史上最も明るい)」と呼ばれるようになったほどです。

この爆発に対し、スペイン・ラパルマ島にある大型望遠鏡「チェレンコフ望遠鏡LST-1」が緊急対応。
東京大学、千葉大学、京都大学などの日本の研究者も参加する国際チームが、爆発発生から1.33日後という早い段階で観測を開始しました。
しかし、当時はなんと“満月”。
LST-1にとって月明かりは強敵で、通常であれば観測を中止するレベルの明るさです。
それでもチームは、あえてリスクを取り、カメラの感度を調整することで観測を強行しました。
その結果、地球に届いた非常に高エネルギーのガンマ線をとらえることに成功しました。
しかもこの観測は、チェレンコフ望遠鏡による唯一のGRB 221009Aの記録であり、史上最大規模のGRB観測キャンペーンとなったのです。