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炎の中も走れる探査用ホイール。イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
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火の中も走る宇宙探査用「オリガミ」車輪を開発【動画あり】

2025.12.19 11:30:39 Friday

他の天体を探索するためには多くの課題が残っていますが、その1つが「壊れにくい探査車」を開発することです。

月や火星の表面は、急な斜面や鋭い岩、細かい砂に覆われており、しかも故障しても修理はできません。

そのため、探査車にとって「どんな環境でも走り続けられること」は、科学機器の性能以上に重要な条件になります。

こうした課題に対し、韓国科学技術院(KAIST)を中心とする研究チームは、直径を大きく変えられる“折り紙構造”の空気不要ホイールを新たに開発しました。

この車輪は、月の溶岩洞やクレーター内部といった極端な地形を想定して設計され、落下衝撃や高温にも耐えることが実験で示されています。

この研究成果は、2025年12月17日付で科学雑誌『Science Robotics』に掲載されました。

KAIST-UEL Team Develops Origami Airless Wheel to Explore Lunar Caves https://news.kaist.ac.kr/newsen/html/news/?mode=V&mng_no=56190 Helical rover wheel balloons from 9 to 20 inches & survives fire https://newatlas.com/space/expanding-airless-wheel-fire-damage-resistance/
Soft deployable airless wheel for lunar lava tube intact exploration https://doi.org/10.1126/scirobotics.adx2549

宇宙探査用の「壊れない車輪」の開発

面探査で特に注目されている場所の一つが、「溶岩洞」や「ピット」と呼ばれる縦穴状の地形です。

これらは太古の火山活動によって形成された地下空洞で、宇宙放射線や隕石、激しい温度変化から内部が守られている可能性があります。

そのため、将来、人類が月に長期滞在する際の拠点候補としても期待されています。

しかし、こうした場所にたどり着くまでの道のりは過酷です。

入口付近は急斜面で、柔らかい砂と岩が混在し、小型の探査車ではタイヤが空転したり、途中で動けなくなったりする危険があります。

大型ローバーを投入すれば走破性は高まりますが、1台が故障すればミッション全体が失敗するリスクも高くなります。

そこで研究チームが着目したのが、「小型ローバーを多数送り込み、互いに補完しながら探査する」という戦略です。

この方法なら、数台が故障しても残りで調査を続けられます。

ただし、そのためには小型でも高い走破能力を持つ車輪が不可欠でした。

今回開発された新しいホイール(画像はこちら。※プレスリリース)は、収納時は直径約230ミリと非常にコンパクトですが、展開すると約500ミリまで拡大します。

これにより、移動や輸送時は小型のまま、現地では大径ホイールとして段差や岩を乗り越えることができます。

しかも空気を使わないため、パンクの心配がなく、真空状態の月面でも問題なく機能します。

では、どのような仕組みがそれら新機能を実現させているのでしょうか。

次項では動画も確認できます。

次ページオリガミ構造が生む「壊れにくさ」と実証された性能

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