電気で会話する魚たちの世界

声変わりといえば、思春期の人間の男の子の声が低く太くなる現象がよく知られています。
では魚にも「声変わり」があると聞いたら、にわかには信じがたいかもしれません。
しかし自然界を覗いてみると、そもそも音ではなく電気で「会話」する魚たちがいて、彼らにも成長とともに電気信号が変化するのです。
たとえばアフリカの淡水域に暮らす弱電気魚(デンキウナギとは別のグループ)は、筋肉からなる特殊な電気器官で微弱な電気パルスを発生させます。
これはソナーのように周囲を探る「目」の役割であると同時に、仲間同士で交信する「声」の役割も果たしています。
種ごとに電気パルスの形や長さが違っており、そのパターンはまるで種ごとの名刺のようです。
暗い川底で「ここにいるよ」と居場所を知らせたり、「ボクとつがいにならない?」と求愛したり、ときにはライバルへのけん制に使われたりします。
こうした電気信号は種ごとに固有で、異なる種同士では信号が通じにくく、互いに交配しないための生殖的な壁の一部を担っていると考えられているのです。
そんな電気魚の仲間キャンピロモルミルス属では、不思議な現象が知られていました。
子どもの頃は多くの種でミリ秒単位のの短い「ピッ」という電気パルスしか出せないのに、成長して大人になると種によってパルスの長さが劇的に伸びるものがいるのです。
例えばコンプレッシロストリス種では子どもも大人も「ピッ」のままですが、リンコフォルス(rhynchophorus)種では子どもの頃こそ短いものの、成熟した大人は「ビーーッ」という長い波形に変化します。
同じ川の中に、こうした「声変わりしない種」と「声変わりする種」、さらにその中間的な特徴を持つ雑種までがそろっていて、まるで天然の実験装置のようになっているのです。
「電気で会話する魚の声変わりを調べるなんてマニアックにもほどがある!」と思う人もいるでしょう。
しかしマニアックに思える語群の向こうには、往々にして、面白い真理が潜んでいます。


























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