脳トレとワクチンが出会った日

報酬系の働きを自分で高めることで人間もマウスのように免疫力を高められるのか?
答えを得るために研究者たちは実験を行うことにしました。
ただ人間の場合、マウスと違って健康な人に対して頭蓋骨に穴をあけて脳を刺激するわけにはいきません。
そこで研究者たちは被験者たちに自分の脳活動の様子を見せながら、自分の報酬系を活性化させる「脳トレ」を行ってもらいました。
具体的には85人の健康な成人が参加し、脳スキャナーの中で楽しい出来事や将来のワクワクを思い浮かべ、画面に出るスコアとニコニコマークを見ながら、指定された脳の領域(報酬系や対照ネットワーク)をどれだけ光らせられるかをゲーム感覚で競ったのです。
訓練を繰り返す中で多くの参加者は少しずつ「自分のごほうび回路(VTA)を上げるコツ」を学んでいきました。
では肝心の免疫力には変化があったのでしょうか?
研究者たちは、訓練を終えた被験者たちにB型肝炎ワクチンを接種してもらい、接種後2週と4週で抗体が増えたかを計算しました。
すると、報酬領域(VTA)を活性化させる訓練をした被験者グループと、それ以外の脳領域を活性化させる訓練をした被験者グループの「平均値」そのものには大きな違いがありませんでした。
しかし個人レベルでは差がありました。
報酬領域(VTA)を活性化させるのが上手い個人ほど、抗体の増え方が大きいことが統計的に有意な相関として報告されたのです(相関係数は0.31と中程度でした)。
ここで気になるのが、「どんな心の使い方をした人が、報酬領域(VTA)をうまく上げられていたのか」です。
研究チームは、各試行で使われたメンタル戦略を、「ポジティブな期待」「楽しい気分」「愛情」「幸福感」など45の特徴で後からラベリングしました。
その中でも特に注目されたのが、「ポジティブな期待」です。
解析の結果、訓練の初期(2回目のセッション)では、「期待」を使う戦略は報酬領域(VTA)の活動を最初の10秒だけ高めて、すぐにしぼんでしまう“瞬間的な効果”でした。
しかし最終セッションでは状況が逆転し、「期待」を使う戦略ほど、報酬領域の活動が40秒間の試行のあいだ中、じわっと高く維持されるようになっていたのです。
研究者たちは統計的にその他の要因についても分析しましたが、最終的に「報酬領域(VTA)を自分で持続的に高める能力」と「ワクチンに対する抗体応答」のあいだに、ある程度特異的な関連がある可能性が示唆されるとの結論に至りました。


























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