それでも徳をもつ人ほど、幸福感は高かった
ところが、分析を進めると、まったく異なる側面が浮かび上がりました。
日常的に忍耐強く、思いやりがあり、自制心をもって行動する人ほど、全体としてのウェルビーイングが高かったのです。
さらに重要なのは、「普段よりも多く徳を発揮した瞬間」に注目した結果です。
たとえば、いつも以上に相手を思いやったとき、いつも以上に我慢強く対応したとき、人はその瞬間、普段よりも良い状態を報告する傾向がありました。
ここで鍵となるのは、「気分の良さ」だけではありません。
徳を発揮しているとき、人は自分の行動を「より意味のあるもの」として感じやすくなっていました。
つらさが完全に消えるわけではないものの、「やるべきことをやった」「価値のある時間だった」という感覚が、幸福感を下支えしていたと考えられます。
この結果は「徳は他人のためにはなるが、自分のためにはならない」という見方とは一致しません。
むしろ、徳は長い目で見て、個人の幸福感を支える要素である可能性を示しています。
幸福への近道は「楽な選択」ではないのかもしれない
今回の研究は、「徳をもてば常に楽になれる」と主張するものではありません。
忍耐や自制、思いやりは、今この瞬間の快適さを犠牲にする場面でこそ現れます。
それでも、そうした行動を積み重ねることが、自分の人生を意味あるものとして感じさせ、結果的に幸福感を高めている可能性が示されました。
もしかすると、幸福とは「楽な選択」を積み重ねた先にあるのではなく、「意味のある選択」を重ねた先にあるのかもしれません。




























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