長距離接続がつくる「賢いネットワーク」と、人間性への手がかり

今回の研究により、「ヒトiPS細胞(いろいろな細胞になれる万能細胞)から作ったミニ脳を、軸索(神経細胞から伸びる電線)の束でつなぐと、3つのことが起こることが示されました。
①片方がしゃべり出すと、もう片方もそれに合わせてしゃべり出すような「セッション」が生まれ
②その道路を通って何度も往復したリズムが、“ちょっとだけ覚えられる”ようになり
③遠くまで軸索を伸ばしたニューロンたちが質的に変化していく
著者たちはこの現象を「プロジェクション軸索(離れた領域に伸びる軸索)が、オルガノイド回路の機能を底上げする構造的ハブとして働いている」とまとめています。
わかりやすく言えば、太い幹線道路が一本通るだけで、周りの細い道もふくめた町全体の行き来が一気にスムーズになり、ミニ脳全体の「会話量」と「話題のバリエーション」がアップしている、というわけです。
実際、束の中に軸索を伸ばしているニューロンは、活動性や成熟に関わる遺伝子の発現が高く、“遠距離バス路線”を持つ細胞ほどよく働き、よく育っているように見えました。
ネットワークの複雑性や情報伝達の効率は、知能にとっても重要な要素です。
また人の脳は、ネズミなどと比べてこうした遠距離の軸索がとても多いことが知られていて、「人らしさ」は細胞一個いっこではなく、この“長い廊下ネットワーク”に宿っているのではないか、という見方もあります。
今回の結果は「長距離のつながりを持つことそのものが、そのニューロンの性質を変え、ネットワークの中での役割まで作り込んでいるのではないか」という考えを調査するにあたり、有用となるでしょう。
研究者たちは、今回の成果を土台に、将来こうしたミニ脳ネットワークを大量に生産して扱う「脳生産技術」や「体の外で育てた神経回路に情報を書き込み、読み出す“生きたメモリー”」や、「人工知能とミニ脳ネットワークを組み合わせたハイブリッド計算機」といった構想も語っています。
もしかしたら未来の世界では、パソコンの横に小さな「コネクトイド水槽」がちょこんと置かれ、人工知能の相棒として、静かにゆらめいているかもしれません。
























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