鶏よりも軽いミニ恐竜は何を食べていたのか?

「恐竜」と聞くと、多くの人はまずティラノサウルスのような巨大な肉食恐竜を思い浮かべると思います。
しかし、実際の恐竜時代の世界には、小型の肉食恐竜や雑食恐竜もたくさんいて、そうした「ちび捕食者」たちが生態系の細かい部分を支えていました。
アルヴァレスサウルス類は、その中でもとくに奇妙なグループです。
後期のアルヴァレスサウルス科と呼ばれる一部のグループでは、体が小さいうえに、腕が極端に短く太くなり、親指だけが大きなかぎ爪として残っています。
歯はとても小さく、鳥のようなくちばしに近い形の種もいます。
そのため、昔は「飛べない鳥」に近いグループだと考えられていた時期もありました。
しかし研究が進むと、このなかまの後のほうの種類は、アリやシロアリを専門に食べる生活(ミルメコファジー)をしていた可能性がある、と考えられるようになりました。
短くがっしりした前あしと大きな親指はアリ塚をこわすための道具、小さく細かい歯と発達した感覚は、アリを探してすくうためのしくみだと説明されてきたのです。
このため、アルヴァレスサウロイドの進化は、「大きな先祖から少しずつ小さくなり、それと同時にアリ食い専用の体に変わっていった」という流れで語られることが多くなっていました。
ところが、このストーリーには大きな弱点がありました。
化石の断片的なものが多く、後あしだけ、腕だけ、といったバラバラの骨で、全身の姿や本当の体重がはっきりしなかったのです。
そこで研究者たちは、ラ・ブイトレラで見つかった、ほぼ完全な約9500万年前(推定)のアルナシェトリの骨格をていねいに調べることにしました。
その結果、骨の年輪のような「成長線」などから、少なくとも数年は生きていたとみられますが、完全成長ではない亜成体(成長途中の個体)だと解釈されています。
また、骨の長さや太さから、他の恐竜や現代の動物との比較式を使って体重を求めると、約0.7キログラムでニワトリより軽いと推定されました。
(※骨の成長線などから既に急激に大きくなる段階は過ぎており、ほぼこのライン(0.7kg+α)で完全成体でも1㎏に収まると考えられます。一方で一般的なニワトリは成鶏で2㎏前後のものも多いです)
アルナシェトリの前あしは、後あしの長さの約6わりと、相対的にはかなり長めです。
三本の指もどれもしっかり伸びていて、後期のアリ食い特化型のような、とても短い腕や縮んだ指にはなっていません。
歯も小さいながら極端に縮小しているわけではなく、そろっていました。
そのため研究者たちは、このニワトリサイズの恐竜は小型ながらも肉食であり、小型の脊椎動物や無脊椎動物など、わりと広い種類の小さな獲物をおいかけていた可能性があると考えているようです。
アリクイ恐竜へと進化する前の段階で、ミニ恐竜として肉食生活を送っていたわけです。
もしこの結果が正しければ、白亜紀の砂漠のようすも、少し違って見えてきます。
たとえば、体重何トンもあるような巨大恐竜の足元で、その千分の一にも満たない小さなハンターたちが、砂丘のかげをすばやく走り回っていたかもしれません。
また研究者たちは、アルナシェトリをふくむ多くの恐竜の特徴をまとめ、「進化の家系図」をコンピューターで作り同時に「体重の変化」や「生息地」も追っていきました。
その結果、モデル推定では、アルヴァレスサウロイドのなかまは、もともと小さめの肉食恐竜として大陸が一つだったパンゲア規模の広い地域に広がっていたというモデルが最も合うことがわかりました。
小さいながらも広大な生息域を持っていたことから、超小型肉食恐竜という戦略が成り立っていた可能性を示唆します。
また進化の中で「全体として体重が少しずつ減っていく」という進化的小型化モデルよりも、「0.7〜数キログラムほどのせまい体重の範囲で、いろいろな枝がそれぞれに大きくなったり小さくなったりしていた」と考えるモデルのほうが、データによく合うことが分かりました。
これは「進化の過程でどんどん小さくなっていった」という従来の考えとは異なるものです。




























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