左右の起源はいつまで遡れるのか?

生命の歴史に「カンブリア爆発」と呼ばれる大事件があります。
約5億4000万年前、多種多様な動物が爆発的に姿を現した出来事で、教科書にも載るほど有名なエピソードです。
しかし実は、その爆発の”前夜”にあたる時代に、すでに大きな生物たちが海の底でひっそりと暮らしていました。
エディアカラ紀(約6億3500万〜5億3800万年前)と呼ばれるこの時代は、肉眼で見えるほど大きく複雑な生物たちが、化石記録のなかに豊富に姿を現しはじめた時期です。
ただし、当時の生物の大半は、海底の岩や砂地にじっと貼りついたまま動かない暮らしをしていました。
自力で移動できるものは、ほんのわずかだったと考えられています。
そんな静かな世界の中に、ひときわ変わった住人がいました。
その名をスプリギナ(Spriggina floundersi)といいます。
体長はおよそ2〜3センチ。
平べったくて細長い体に、たくさんの節のような区切りが並んでいます。
見た目の印象としてはミミズやヒラムシに近いかもしれません。(※実際にどの動物グループに属するかは、いまだ確定していません。)
ですが、この何の変哲もない生物には、注目すべき特徴がありました。
体のつくりに「右と左」の対応があり、さらに幅広い端と細い端という「前と後ろ」らしき向きも見てとれたのです。
私たちにとって「前後・左右のある体」はあまりに当たり前ですが、スプリギナが生きていた時代には、それはむしろ珍しい体制でした。
同じ海底にいた他の生き物たちの多くは、体を輪切りにしても前後の区別がなかったり、そもそも「どちらが頭でどちらが尾か」を決められない構造をしていたりしたのです。
つまりスプリギナは、いま私たちが受け継いでいる「きちんと向きのある体」を持った、最も古い動物のひとつでした。
動物の体の設計図が、まさに整いはじめた瞬間に立ち会っている生き物とも言えるでしょう。
ここで一つ、自然な疑問が浮かびます。
そもそも「右利き」と呼べる性質は、体に「右と左」という軸があって初めて生まれるものです。
ならば、その「右と左」をそなえた最古級の動物であるスプリギナに、最初の「利き側」の痕跡が見つかってもおかしくないのではないか——?




























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