なぜ腸の変化が脳の記憶力を奪えるのか?

研究チームが次にやったことは、どの腸内細菌が記憶力低下を起こしているのか、その「真犯人」を突き止める作業でした。
腸内には数え切れないほど多くの細菌がいるのですが、もちろんすべての細菌が悪さをしているわけではありません。
そこで、マウスの腸内細菌をずっと追跡調査して、年齢とともに増えやすく、しかも若いマウスに伝わって記憶力を落とすような菌を探しました。
すると、浮かび上がってきた最有力容疑者「パラバクテロイデス・ゴールドスタイニー(P. goldsteinii)」という細菌だったのです。
研究チームは、この菌だけを若いマウスに与えても、記憶力が落ちることを確認しました。
一方で、同じように年齢とともに増える他の細菌を与えたときは、この記憶低下は起きませんでした。
つまり、今回の研究はただ単に「年をとったから腸内細菌が悪くなった」という話ではなく、「パラバクテロイデス・ゴールドスタイニーを含む特定の菌が増えたことが、有力な要因の一つだった」わけです。
では、この「犯人」の細菌はいったいどんな方法で脳に影響を与えていたのでしょうか?
実は、この細菌そのものが脳に侵入して暴れ回っていた、というわけではありません。
研究者が注目したのは、この細菌が腸の中で作り出す「中鎖脂肪酸」という脂肪酸の一種でした。
たとえるなら、これは細菌が腸の中でまき散らした「迷惑なゴミ」のようなものです。
実験によれば、このゴミ(中鎖脂肪酸)をマウスに与えただけでも、脳の記憶を担当する「海馬」という場所の反応がガクンと落ちてしまったのです。
では、腸にまかれたゴミが、どうして遠く離れた脳の記憶にまで影響を与えるのでしょう?
ここで鍵となるのが「迷走神経」という神経です。
「迷走神経」というのは、わかりやすく言うと「腸と脳をつないで情報をやりとりする電話線」のような役割を持っています。
普段、私たちがお腹いっぱい食べたり、胃がムカムカしたりすると、その情報は腸から脳に電話で伝えられます。
そして脳はこの電話を受けて「今こんな状況なら、ちょっと休もうかな」とか「じゃあ次はこうしよう」と判断しています。
ところが、今回の高齢マウスや、高齢マウスから腸内細菌をもらった若いマウスでは、この「電話線」の反応がかなり弱くなっていたのです。
若くて健康なマウスなら、腸の状況が脳へスムーズに伝わります。
ですが、問題の脂肪の粒(ゴミ)が増えた腸では、電話線の調子が悪くなり、「大切な情報」が脳にちゃんと届かなくなってしまったのです。
そして、肝心な情報を受け取れない脳の「海馬」は、「あれ?大事な情報が届いていないな…」と混乱し、記憶の書き込みがうまくできなくなってしまった、というわけなのです。
さらに研究者が詳しく調べると、この「電話線」が切れかけた理由には、もうひとつ重要な原因がありました。
それが「炎症」です。
細菌が出した脂肪の粒(ゴミ)が腸の中で広がると、それに刺激された免疫細胞が「あれ?何か怪しいぞ!」と警戒して炎症を起こします。
炎症というのは、簡単に言えば体が「何かトラブルが起きているぞ!」と騒ぎ出すことです。
そして、その騒ぎ(炎症)が起きると、腸の近くで「TNF」や「IL-1β」という物質(炎症の目印のようなもの)が次々と出てきます。
しかも、この炎症は脳全体が大騒ぎになるというより、腸の近くで起きる局所的な炎症でも十分に影響したようでした。
ところが、この物質が増えすぎると、迷走神経という電話線の働きが鈍くなってしまいます。
つまり、細菌がまいたゴミのせいで免疫細胞が騒ぎ出し、その騒ぎが腸と脳を結ぶ電話線(迷走神経)を弱らせ、結果として脳の記憶力まで落ちてしまったわけです。
まとめると
「年を取った腸で特定の細菌が増える➔細菌が脂肪酸をばらまく➔その脂肪酸が腸の免疫細胞を刺激して炎症が起きる➔炎症が電話線(迷走神経)を弱らせる➔脳の記憶場所(海馬)に情報が届きにくくなる➔記憶力が落ちる」
という感じです。
「物忘れ」という脳の問題が、実はかなり遠い腸の中から始まっていた、という意外な仕組みが今回の研究で示されたのです。




























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