ハチドリは毎日、体重比で「人間の1杯」に近いアルコールを摂取している
花蜜に含まれるアルコールはごく微量ですが、重要なのは濃度そのものよりも、それを毎日どれだけ飲むかです。
ハチドリのような鳥は、1日に自分の体重の50%から150%にも相当する量の蜜を摂取します。
つまり、薄いアルコールでも、体の大きさに対して見れば無視しにくい量になる可能性があります。
研究チームは、既存の文献から各動物の体重や必要エネルギー量をもとに、1日にどれだけのエタノールを摂るかを推定しました。
その結果、アンナハチドリ(学名:Calypte anna)では体重1キログラムあたり1日約0.2グラムのエタノールを摂取する可能性があると見積もられました。
これは、人間が1日に標準的なアルコール飲料を1杯飲む量におおむね近い水準です。
つまり、「ハチドリは毎日、体重比で見ると人間の1杯分に近いアルコールを摂取している」と言えるのです。
では、そんなに飲んでいるなら本当に酔わないのでしょうか。
現時点では、少なくとも人間の酔いのような分かりやすい影響が出ているとは示されていません。
ただし、この研究はハチドリの酔いそのものを直接測ったものではありません。
研究者たちは、ハチドリの極端に高い代謝のため、取り込んだアルコールが体内に長く残る前に処理されている可能性があると考えています。
さらに興味深いのは、ハチドリやハチがアルコール摂取量を調整しているように見える点です。
彼らは低濃度のエタノールを含む蜜は問題なく摂取しますが、濃度が高くなると回避する傾向が見られたのです。
ちなみに、花の蜜に含まれる微量成分が動物の行動に影響を与える例はすでに知られています。
例えばカフェインやニコチンは、花粉媒介者の訪問頻度や記憶に影響を与えることが確認されています。
ただし、現時点ではアルコールがどの程度行動に影響しているのか、また植物側にとってそれが有利に働いているのかは明確ではありません。
今後は、こうした微量アルコールが動物の意思決定やエネルギー利用にどう関わるのか、さらに詳しい研究が必要です。
今回の研究は、花と動物の関係を単なる「蜜と受粉の交換」としてではなく、微生物や発酵まで含めた複雑な相互作用として捉え直すきっかけとなるものです。
私たちにとって酒は好みが分かれる嗜好品ですが、自然界ではもっと日常的なものかもしれません。
花から花へと飛び回るハチドリは、私たちとはまったく違う形で、毎日の「1杯」と付き合っているのです。



























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