魚のタンパク質でマウス脳の配線を操作する

どうすれば狙った細胞同士の間に電気シナプスを作れるのか?
彼らはこう考えました。
「同じ部品同士が勝手にくっつくのが問題なら、決まった相方とだけカチッと噛み合う特殊な部品ペアを、自分たちで設計してしまえばいい」
工学的にたとえるなら、専用のオスとメスのコネクターのような関係です。
オス同士もメス同士もくっつかない、でもオスとメスを近づけるとカチッと嵌まる。
しかも哺乳類の脳に元々あるコネキシンとも互換性がないので、勝手に繋がる心配もない。
そんな部品ペアさえ作れれば、片方を細胞Aに、もう片方を細胞Bに送り込んでおくだけで、AとBが接触している場所だけにトンネルができる。
狙い撃ちが実現するわけです。
そして研究チームが目をつけた意外な相手が、北米の川や湖に住むホワイトパーチ(学名Morone americana、北米にすむスズキ目モロネ科の魚)でした。
ホワイトパーチが体内に持つ二種類のコネキシン(電気の通路を作るタンパク質)は、もともと天然の状態で異種同士でドッキングする性質を持っており、まさに研究者が探していたひな型だったのです。
ただし、魚から取り出したそのままでは、マウスの脳に元々あるコネキシンと勝手にくっついてしまいます。
そこで研究チームは、この二種類の部品の設計を細かく書き換え、「相方とだけくっつき、自分同士でも哺乳類自身の部品ともくっつかない」ペアを作り出しました。
仕組みの正体は意外なほどシンプルで、プラスとマイナスの電気的な引き合いでした。
改造を加えた一方の部品は結合面を「プラス側」に、もう一方は「マイナス側」に振ってあります。
プラス同士もマイナス同士も反発するので、自分同士ではくっつきません。
けれども両者を近づければ、プラスとマイナスが強く引き合ってしっかり噛み合うのです。
研究チームは、このシステム全体を LinCx(リンクス) と名付けました。
ここから先はいよいよ、この人工の部品ペアを実際に脳に入れたら何が起きたのか、本題に入ります。


















































