顔と声を結びつけることもできた
チームはさらに、牛が顔だけでなく、声も組み合わせて人間を認識できるかを調べました。
これは「クロスモーダル認識」と呼ばれる能力です。
視覚で得た顔の情報と、聴覚で得た声の情報を結びつけて、同じ相手として認識できるかを見るものです。
実験では、見慣れた人と見慣れない人の顔の動画を見せながら、どちらか一方の男性の声を再生。
このとき2人の男性は同じ文を話しており、言葉の内容ではなく、声そのものと顔の対応が調べられました。
すると牛は、流れている声と顔が一致している動画をより長く見つめました。
これは、牛が「この声はこの顔の人のものだ」と対応づけている可能性を示しています。
一方で、心拍数には大きな違いは見られませんでした。
つまり、見慣れた顔や声、見慣れない顔や声によって、牛が強い恐怖や興奮を示したわけではなさそうです。
今回の結果は、感情の大きな変化というより、注意の向け方や認識の違いとして捉えるのが適切です。
もちろん、動画と録音音声は、実際に人間と向き合う状況そのものではありません。
現実のやり取りでは、におい、姿勢、動き、距離感など、もっと多くの手がかりが含まれます。
それでも今回の研究は、牛が人間をぼんやりと「人間」として見ているだけでなく、顔や声を使って個別に識別している可能性を示しました。
牛にとって世話係は、ただ餌をくれる存在ではなく、顔と声をもった「見分けられる相手」なのかもしれません。
牛の福祉を考えるうえでも、こうした認知能力を理解することは重要です。
私たちが牛を見分けるように、牛もまた、私たちのことを静かに見分けているのかもしれません。



























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